「うちの園の人件費の割合は高すぎるのか」— 決算書を見ても、比べる物差しが無いと判断できません。こども家庭庁が令和6年12月に公表した幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査(令和5年度決算)には、私立の幼稚園(新制度)と認定こども園の平均値が載っています。人件費比率と収支差率の2つを、園の計算書類からどう出し、平均とどう比べるかを整理しました。
園の経営指標の読み方 — 人件費比率・収支差率を令和6年度の経営実態調査の平均と比べる
この記事の要点
- 私立の幼稚園(新制度)の人件費比率は68.7%、認定こども園は72.0%(令和5年度決算・収益に対する割合)。前回調査(平成30年度決算)からどちらも上がった
- 収支差率は基本金組入前で幼稚園(新制度)2.7%、認定こども園2.1%。基本金組入後は幼稚園0.0%、認定こども園0.4%と、ほぼ収支とんとんが平均の姿
- 園の指標は、事業活動収支計算書から同じ定義で出して比べる。平均との差は「良い悪い」ではなく、原因を探す入口
調査の物差し — 「収益に対する割合」で見る
経営実態調査は、公定価格の改善のための基礎資料として、前回の令和元年度調査から5年ぶりに行われたものです。人件費比率は人件費を収益で割った割合、収支差率は収益から費用を引いた収支差を収益で割った割合です。学校法人会計の幼稚園・認定こども園については、基本金組入額を加味した収支差も出しています。
幼稚園(新制度)の集計は663施設、平均利用定員119.6人・平均児童数109.8人の私立施設が対象です。収益・費用には、預かり保育や子育て支援など調査対象外の事業や地方単独事業も含まれています。
| 指標 | 幼稚園(新制度) | 認定こども園 |
|---|---|---|
| 人件費比率 | 68.7% | 72.0% |
| 人件費比率の前回調査(平成30年度決算) | 63.8% | 69.5% |
| 収支差率(基本金組入前) | 2.7% | 2.1% |
| 収支差率(基本金組入後) | 0.0% | 0.4% |
幼稚園(新制度)の費用の内訳は、人件費68.7%、教育研究経費24.2%、管理経費3.6%で、費用計は収益の97.3%です。基本金組入前の収支差2.7%を基本金組入額がほぼ打ち消して、組入後はわずかに支出超過というのが平均像です。保育所の人件費比率は73.0%で、全体として収益の6〜8割が人件費に充てられています。
園の指標を同じ定義で出す — 事業活動収支計算書から
園の人件費比率と収支差率の出し方
収益を決める
事業活動収支計算書の教育活動収入(その他収入を除く)と教育活動外収入を合わせた額を分母にする
人件費比率を出す
人件費(教員人件費・職員人件費・役員報酬・退職給与引当金繰入額などの人件費計)を1の収益で割る。調査の人件費には派遣職員に係る経費と法定福利費も含まれているので、園の側も同じ範囲でそろえる
収支差率を出す
収益から教育活動支出・教育活動外支出・特別支出の合計を引いた収支差を収益で割る。基本金組入額を引いた後の割合も出す
平均と並べる
上の表の同じ種別の値と並べ、差の大きい項目から原因を探す
調査の分母には預かり保育や子育て支援の収入も含まれているため、園の側でもこれらを除かずに計算します。除いて比べると、平均との差が実際より大きく見えます。ただし、預かり保育や給食などの補助活動事業を純額(収入と支出の差額)で表示している園は、総額に直してから分母と人件費を出します。
平均と違うときの読み方 — 原因を3つに分ける
人件費比率が平均より高い園は、まず原因を3つに分けます。単価(処遇改善で給与が上がっている。調査でも保育士等の給与月額は約4〜5万円増えている)、人数(配置基準を上回る配置や、定員に対する在籍の少なさ)、分母(収益の側で加算の取り漏れや定員割れがある)の3つです。
あなたの園は、平均のどちら側にいるでしょうか。差がある項目を1つ選んで、原因を園の言葉で説明できるか試してみてください。
まとめ — 平均は「答え」ではなく「問いの立て方」
経営指標は、園の決算書から同じ定義で出し、同じ種別の平均と並べて初めて意味を持ちます。人件費比率68.7%・収支差率2.7%(幼稚園(新制度)・基本金組入前)を物差しに、差の原因を単価・人数・分母に分けて探すのが第一歩です。指標の出し方や加算の取り漏れの点検は、無料相談でお手伝いします。
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