ささき公認会計士事務所 幼稚園・認定こども園の監査専門 無料相談

園に法人税がかかる収入・かからない収入 — 収益事業の線引きとみなし寄附金

「うちの園に法人税はかかるのだろうか」— 制服の販売やバザー、園庭の一部を貸す駐車場など、保育以外の収入が出てくると気になる問いです。この記事では、学校法人に法人税がかかる収入の線引きと、かかった場合の税率・負担を軽くする仕組みを整理します。

この記事の要点

  • 学校法人は「収益事業」を行う場合に限って法人税を納める1。保育料や施設型給付費にはかからない
  • 収益事業は政令で定めた34種類の事業のうち、継続して事業場を設けて行うもの。制服や文房具の販売は原則として当たるが、原価程度で渡していることが明らかなものは非収益事業にできる。年1〜2回のバザーは当たらない
  • 収益事業の所得には法人税(年800万円以下の部分は15%、超える部分は19%)。その利益を園の教育に実際に回した分は寄附金とみなされ、所得の50%(年200万円未満なら200万円)まで損金にできる

根拠:1法人税法4条1項

原則 — 学校法人は収益事業を行うときだけ法人税を納める

学校法人は法人税法の「公益法人等」に当たり、法人税を納める義務は収益事業を行う場合などに限られています1。施設型給付費や保護者からの基本保育料、預かり保育料のような園の本来の収入に、法人税はかかりません。

では収益事業とは何でしょうか。法人税法は「販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるもの」と定めています2。政令で定める事業は物品販売業・不動産貸付業・駐車場業など34種類です3。

根拠:1法人税法4条1項2同2条13号3法人税法施行令5条1項

園でよくある収入の当てはめ — 制服・教材・バザー・駐車場

学校法人が物品を売るとき、どこまでが物品販売業かは国税庁の通達が線を引いています(法人税基本通達15-1-10)。教科書やこれに類する教材以外の出版物の販売、文房具や食料品などの販売は物品販売業に当たり、制服・制帽の販売も物品販売業に当たるとされています。一方、年1〜2回開催される程度のバザーは物品販売業に当たりません。

幼稚園については、これに加えて国税庁の個別通達「幼稚園が行う各種事業の収益事業の判定について」(昭和58年6月3日付 直法2-7)が、園の実務に沿った判定表を示しています。工作道具・文房具・楽器・道具箱・制服・体操着などの頒布は収益事業としたうえで、「物品の頒布のうち原価(又は原価に所要の経費をプラスした程度の価格)によることが明らかなものは非収益事業」とし、絵本・ワークブックの頒布、スクールバスの運行、給食は非収益事業としています。

園でよくある収入と収益事業の判定
収入判定根拠の考え方
保育料・施設型給付費・預かり保育料収益事業ではない園の本来の教育・保育の収入
絵本・ワークブックの頒布物品販売業に当たらない教科書に類する教材(法人税基本通達15-1-10(2)の注)・直法2-7の判定表1
制服・制帽・体操着の販売原則は物品販売業。原価程度で渡していることが明らかなら非収益事業法人税基本通達15-1-10(4)・直法2-7の判定表2
はさみ・のり・クレヨン・文房具・楽器・道具箱の頒布原則は物品販売業。原価程度で渡していることが明らかなら非収益事業法人税基本通達15-1-10(3)・直法2-7の判定表2
スクールバスの運行・給食収益事業ではない直法2-7の判定表5・6
園児の希望者向けに課外で開く音楽教室技芸教授業に当たる(園が教室を外部の講師に貸すだけの形なら、本来の業務に関連する席貸しとして収益事業から除かれる)法人税法施行令5条1項30号・14号・直法2-7の判定表4
年1〜2回程度のバザー物品販売業に当たらない(技芸教授に関係する教材の販売やバザーは除く)法人税基本通達15-1-10(5)・15-1-6(2)
園庭の一部を月ぎめで貸す駐車場駐車場業に当たる法人税法施行令5条1項31号
園舎の一部を外部に貸す不動産貸付業に当たる(国や地方公共団体に直接貸して直接使わせる場合は除く)法人税法施行令5条1項5号

判定の分かれ目は、園児に渡す価格です。仕入原価か、それに必要な経費を加えた程度の価格で渡していることが帳簿や請求書で明らかなら非収益事業にでき、利益を乗せて販売していれば物品販売業に当たります。制服と教材を同じ業者からまとめて仕入れて園児に渡している園では、品目ごとに価格の決め方を確かめてみてください。

法人税の収益事業の判定と、消費税の課税・非課税の判定は別の決まりで動きます。施設型給付を受ける園では、実費徴収する制服や教材の消費税が非課税とされる一方、法人税では利益を乗せた制服の販売が物品販売業に当たります。片方の結論をもう片方に持ち込まないようにしてください。

私立学校法の「収益事業」と法人税法の「収益事業」は別物

同じ「収益事業」という言葉でも、私立学校法と法人税法では指すものが違います。私立学校法では、学校法人がその設置する私立学校の教育に支障のない限り、その収益を私立学校の経営に充てるために行う収益を目的とする事業を指し、事業の種類は所轄庁が定め、寄附行為に載せたうえで特別の会計として区分して経理します1。

一方、法人税法の収益事業は、政令の34種類への当てはめで収入ごとに決まります。寄附行為に収益事業を載せていない園でも、制服を利益を乗せて販売していれば法人税法上は物品販売業に当たり得ますし、私立学校法上の収益事業として行う事業でも、34種類に当たらなければ法人税はかかりません。

2つの「収益事業」の違い
見る点私立学校法2法人税法3
何を指すか教育に支障のない限り、収益を私立学校の経営に充てるために行う収益を目的とする事業政令で定める34種類の事業で、継続して事業場を設けて行うもの
決め方事業の種類は所轄庁が定め、寄附行為に載せる収入ごとに34種類へ当てはめる。本来の事業に付随する販売や貸付も含み得る
会計・税務特別の会計として区分して経理する収益事業の所得に法人税がかかり、申告と区分経理が要る

根拠:1私立学校法19条・23条1項13号2同19条3法人税法2条13号・法人税法施行令5条

法人税の申告が要るかどうかは、寄附行為に収益事業があるかではなく、実際の収入の中身で見ます。「寄附行為に収益事業が無いから法人税も無縁」とは言えない、と覚えておいてください。

収益事業に当たったら — 税率19%と、みなし寄附金

収益事業の所得には法人税がかかります。公益法人等の税率は19%です1。ただし、所得のうち年800万円以下の部分には15%の軽減税率が使えます2。会社の税率(23.2%・中小法人の800万円以下の部分は15%)と比べても、低く抑えられています。

ここで大きく効くのが「みなし寄附金」です。学校法人が収益事業の資産の中から収益事業以外の事業、つまり園の教育・保育のために支出した金額は、収益事業からの寄附金とみなされます3。学校法人の場合、損金にできる上限は収益事業の所得の50%で、その額が年200万円に満たないときは年200万円です4。対象になるのは、収益事業の資金から園の教育・保育のために実際に支出した額と、収益事業の運営に通常必要な額を超える預金などを園の事業に属する資産として区分経理した額です(法人税基本通達15-1-7)。区分経理は帳簿の上だけでなく、収益事業用と教育事業用の口座を分けて同じ額を動かしておくと、あとから説明しやすくなります。

根拠:1法人税法66条3項2租税特別措置法42条の3の23法人税法37条6項4法人税法施行令73条1項3号ロ

つまり、収益事業の利益を園の運営に使っていれば、多くの園では法人税の負担は小さくなります。ただし申告書の提出は要ります。収益事業を始めた年から、法人税の申告と、収益事業の会計を区分した経理が必要になります。

法人税がかからない園は、法人住民税の均等割もかからない

法人税の話とセットで見ておきたいのが、法人住民税の均等割です。市町村は学校法人には市町村民税の均等割を課すことができないと定められていますが、収益事業を行う場合はこの限りでないとされています1。収益事業を行っていない園に均等割はかからず、収益事業を始めると均等割の負担も生じる、という関係です。ただし、収益事業の所得の90%以上を園の経営に充てている学校法人は、住民税では収益事業を行っていないものとして扱われ、均等割はかかりません2。みなし寄附金で利益を園に回している園の多くは、こちらに当てはまります。

根拠:1地方税法296条1項2号2地方税法施行令7条の4・47条

収益事業に当たるかを確かめる3つの段階

  1. 収入を棚卸しする

    保育料・給付費以外の収入(販売・貸付・駐車場・預かりなど)を一覧にする

  2. 34種類に当てる

    物品販売業・不動産貸付業・駐車場業など政令の事業のどれかに当たるかを品目ごとに見る

  3. 継続性を見る

    継続して事業場を設けて行うものか。年1〜2回のバザーのような一時的なものは外れる

ご相談・お見積りは無料です。現在の先生に知られることはありません。

交代のご相談 (無料・守秘義務あり) →

※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する助言ではありません。内容は執筆時点の法令・通知等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、公認会計士等の専門家にご相談ください。

お知らせ・コラムの一覧へ戻る