給食費や預かり保育料のように、保護者から集めて園の活動に使うお金は「収入と支出を相殺して差額だけ載せてよいのでは」と思われがちです。この記事では、総額と純額のどちらで載せるのかの決まりと、迷いやすい収入の科目を整理します。
給食費・預かり保育料の科目 — 純額で載せる前に確かめる3つのこと
この記事の要点
- 計算書類は総額表示が原則。給食など教育活動に付随する活動だけは、基準のただし書で純額表示も選べる
- 純額を選ぶ場合も、相殺の決まり(売上高と売上原価は必ず相殺)と、重要性があるときの注記という条件が付く。金額の大きい活動は総額で見せるのがおすすめ
- 預かり保育料は補助活動収入。未就園児教室の実費は補助活動収入にせず、専用の小科目を設ける
原則は総額 — ただし給食などは純額も「選べる」
学校法人会計基準は、計算書類の金額を総額で表示することを原則としています。そのうえで同じ条文のただし書が、食堂に係る収入と支出その他教育活動に付随する活動の収支に限って、純額での表示を認めています。給食もここに入ります。
つまり「純額は禁止」ではありません。ただ、相殺のしかたまで園の自由というわけではありません。日本公認会計士協会の実務指針(学校法人委員会実務指針第22号)が純額表示の決まりを定めており、相殺できるのは事業活動収支計算書の科目に限られ、「貸借対照表科目については、純額表示することができない」と整理されています。
純額を選ぶなら、3つの条件が付く
純額表示を選ぶ場合も、好きなように相殺できるわけではありません。
- 売上にあたる収入と売上原価にあたる支出は、必ず相殺する。実務指針第22号は「売上高と売上原価に属する科目は、必ず相殺するものとし」、受取利息・雑収入・人件費・経費を相殺するかどうかは「当該学校法人の判断に委ねる」としています
- 相殺してよいのは収支だけで、貸借対照表の科目は相殺できない
- 重要性があると認められる場合は、「純額で表示した補助活動に係る収支」として、相殺した科目と金額を計算書類に注記する。文部科学省の通知(令和7年3月27日 6高私参第27号)の別添「注記事項記載例」に書き方の例があります
そのうえで、一度選んだ方法は毎年同じように通すのが、年度を比べるうえでも監査で説明するうえでも無理がありません。
集めた額と使った額の両方が見えて初めて、理事会や監査がその活動の規模と収支を確かめられます。給食のように金額の大きい活動は、総額で見えるようにしておくことをおすすめします。
預かり保育料の科目
預かり保育は、定時を超えて在園児を預かる教育活動に付随する活動です。日本公認会計士協会のQ&A(学校法人委員会研究報告第21号)は、幼稚園の預かり保育について「この収支は学校法人会計では補助活動収支として計上する」と整理しており、収入の小科目は補助活動収入になります。幼児教育無償化の施設等利用費を園が保護者に代わって受け取る分は、保護者から集める預かり保育料とは性質の違うお金なので、同じ小科目に混ぜずに分けて記録しておきます(科目名は所轄庁の手引でご確認ください)。
未就園児教室の実費は「補助活動収入」にしない
未就園児向けの教室で実費程度の参加料を集める園も多いはずです。ここで注意したいのは、未就園児は在園児ではないことです。
補助活動収入は主として在園児を対象とする活動の科目なので、未就園児教室の参加料には合いません。大科目は同じ付随事業・収益事業収入のまま、「未就園児教室収入」のように実態に応じた小科目を設けるのが望ましい整理です(所轄庁が別の科目を指示している場合はそれに従います)。
| お金の性質 | 扱いの型 |
|---|---|
| 在園児対象の付随活動(給食・預かり保育) | 補助活動収入(総額か純額かは上の決まりで選ぶ) |
| 未就園児対象の教室の実費 | 付随事業・収益事業収入に専用の小科目を設ける |
| 園を通り抜けるだけのお金 | 収入にせず預り金として管理 |
見分けのものさしは、園がその活動の主体かどうか、そして相手が在園児かどうかです。保護者会のお金を一時的に預かるだけなら、園の収入ではありません。
集金のたびの記録が、正しい表示を支える
どの表示方法を選ぶにしても、集金と支払いを別々に記録しておくことが土台になります。月ごとに「集めた額」「使った額」を並べて残しておけば、総額表示はもちろん、純額表示の注記に必要な相殺の内訳もすぐに作れます。
ご自身の園で保護者から集めているお金を、一度すべて書き出してみてください。1つずつ「在園児の活動か、未就園児か、通り抜けか」を当てはめると、科目のぶれている集金が見つかることがあります。何をどの科目で集めているか、新年度の集金案内を作る前に整理しておきませんか。
※小科目の細かな内訳は、所轄庁(都道府県)の手引に追加の定めがあることがあります。表示方法を変えるときは監査人にもご確認ください。
ご相談・お見積りは無料です。現在の先生に知られることはありません。
交代のご相談 (無料・守秘義務あり) →※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する助言ではありません。内容は執筆時点の法令・通知等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、公認会計士等の専門家にご相談ください。