決算書類の数字は毎年見ていても、欄外の「注記」まで読み込む方は多くありません。この記事では、園の計算書類の注記の役割と、実務で気をつけたい点を整理します。
計算書類の注記で気をつけること — 「該当なし」でも書く欄がある
この記事の要点
- 注記は計算書類の一部。数字だけでは伝わらない前提 (会計処理の方針など) を示す欄
- 「該当なし」でも書くべき注記がある。第4号基本金についての注記が代表例
- 重要性の低い項目は省略できる場合があるが、その線引きは園の自己判断で決めない
注記とは — 数字の「前提」を書く欄
同じ金額でも、減価償却の方法や引当金の計上の考え方が違えば、読み手にとっての意味は変わります。その前提を計算書類の読み手に明らかにするのが注記です。ご自身の園の決算書で、注記を最後まで読んだことはあるでしょうか。
つまり注記は飾りではなく、数字とセットで初めて計算書類が完成するという位置づけのものです。監査でも、数字と注記の整合は点検の対象になります。
「該当なし」でも書く注記がある
「うちには関係ないから書かない」で済まないのが、注記の落とし穴です。
よりどころは国の通知にあります。令和7年度からの新基準の施行にあわせて文部科学省が出した通知 (令和7年3月27日 6高私参第27号) には別添「注記事項記載例」が付いていて、該当する事項がない場合の書き方まで示されています。
代表例が第4号基本金 (運営に恒常的に必要な運転資金として保持すべき部分) の注記です。記載例では、相当する資金を有していない場合はその旨と対策を書き、有している場合も「第4号基本金に相当する資金を有しており、該当しない。」と書く形が示されています。つまりどちらのケースでも欄ごと省略はできないという整理です。
担保に供している資産や重要な偶発債務、重要な後発事象なども同じで、無い場合は「なし」と記載する例になっています。「書くことがない」と「書かなくてよい」は別物、と覚えておいてください。
省略できる項目には線引きがある
一方で、明らかに経営状況への影響が少ないものについて、記載を省略できるとされる項目もあります。
これも大もとは国の通知です。同じ通知は、有価証券の時価情報やリース取引などの「財政及び経営の状況を正確に判断するために必要な事項」を、重要性があると認められる場合に記載すると整理しています。平成17年の通知から引き継がれてきた考え方です。
都道府県の資料にも同様の整理があります。例えば埼玉県の学校法人会計質疑応答集は、年度末の有高が少額のたな卸資産の評価基準などを、省略できる例に挙げています。ここで大事なのは、省略の可否が「決まりに照らした判断」であって、園の感覚での取捨選択ではないことです。
迷ったら省略せずに書く、または監査人・所轄庁に確かめる。この順番なら間違いが起きません。
実務でよくあるつまずき
園の決算で見かける注記のつまずきは、だいたい次の型に収まります。
| つまずき | 何が起きるか |
|---|---|
| 前年のひな形の写し | 処理を変えたのに注記が前年のまま残る |
| 数字との不一致 | 注記の金額と計算書類本体の金額が合わない |
| 書き漏れ | 「該当なし」型の注記や、年度末後の大きな出来事 (後発事象) が落ちる |
どれも、決算の最後に注記だけを見直す時間を少し取るだけで防げるものです。直近の決算書の注記のページを、一度開いてみてください。
資料はどこで確かめるか
確かめる順番は、まず国、次に都道府県です。
- 学校法人会計基準 (文部科学省令) と国の通知 — 注記の項目と記載例の大もと。令和7年3月27日の通知の別添「注記事項記載例」は、平成25年の通知で示されていた記載例を改正後の形に置き換えたものです
- 所轄庁 (都道府県) の手引き・研修資料・質疑応答集 — 提出先ごとの細かな指示はこちら
なお、この記事で触れた埼玉県の質疑応答集は埼玉県所轄の学校法人に対する指示であり、他の都道府県の園にそのまま当てはまるとは限りません。国の基準・通知を土台に、ご自身の園を所轄する都道府県の資料と監査人への確認で固めてください。
Q. 注記は誰が書くものですか。
計算書類の一部なので、作成の責任は法人にあります。実務では事務長や会計担当が案を作り、監査人が点検する分担が一般的です。
Q. 注記が多いと、決算書の見栄えが悪くなりませんか。
なりません。注記は経営状況を正確に判断するために必要な事項を記載するものであり、丁寧に書かれた注記はむしろ計算書類の信頼性を高めます。
ご相談・お見積りは無料です。現在の先生に知られることはありません。
交代のご相談 (無料・守秘義務あり) →※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する助言ではありません。内容は執筆時点の法令・通知等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、公認会計士等の専門家にご相談ください。