園舎の建て替えや記念事業で寄付を募るとき、「寄付をすると税金が安くなりますか」と保護者や地域の方から聞かれることがあります。この記事では、学校法人へ寄付する側が受けられる税の優遇と、それを使えるようにするために園の側で用意するものを整理します。
園への寄付と税の優遇 — 寄付する側の控除と園が用意する証明
この記事の要点
- 学校法人は「特定公益増進法人」に当たり、個人の寄付は所得控除(寄附金控除)、法人の寄付は別枠の損金算入の対象になる
- 個人は所轄庁の証明を受けた学校法人への寄付なら、寄付金から2,000円を引いた額の40%を所得税から引く税額控除も選べる
- 入園に関する寄付と、寄付した人に特別の利益が及ぶ寄付は対象外。園の側は証明書・領収書・寄付者名簿を整え、募集の時期と条件を確かめる
学校法人への寄付は「特定公益増進法人」への寄付
所得税法は、公益の増進に著しく寄与する法人として政令で定めるものへの、その法人の主たる目的である業務に関連する寄付を「特定寄附金」としています(所得税法78条2項3号)。この政令には、学校または幼保連携型認定こども園の設置を主たる目的とする学校法人が挙げられています(所得税法施行令217条4号)。幼稚園や認定こども園を運営する学校法人への寄付は、原則としてこの特定寄附金に当たります。ただし、次の囲みの2つは除かれます。
個人の特定寄附金は寄附金控除(所得控除)の対象です。法人が寄付する場合も、同じ趣旨で政令に挙げられた学校法人への寄付は、一般の寄附金とは別枠で損金に算入できます(法人税法37条4項・法人税法施行令77条4号)。
個人の寄付 — 所得控除と税額控除、どちらか有利な方を選べる
個人が学校法人に寄付した場合、寄附金控除(所得控除)に加えて、税額控除を選ぶこともできます。税額控除の対象になるのは、運営組織や事業活動が適正で、市民から支援を受けていることについて政令の要件を満たす学校法人への寄付です(租税特別措置法41条の18の3第1項1号ロ)。
所得控除の額は、その年の特定寄附金の合計額(総所得金額等の40%が上限)から2,000円を引いた額です(所得税法78条1項)。税額控除の額は、その年に支払った寄付金の合計額から2,000円を引いた額の40%で、所得税額の25%が上限です(租税特別措置法41条の18の3第1項)。同じ年に所得控除を受ける別の特定寄附金があるときは、差し引く2,000円と総所得金額等の40%の枠は、その分を除いた残りで計算します。
| 控除 | 計算 | 園の側で要るもの |
|---|---|---|
| 寄附金控除(所得控除) | 寄付金の合計額(総所得金額等の40%が上限)-2,000円を所得から差し引く | 特定公益増進法人である旨の証明書の写しと領収書 |
| 税額控除 | (寄付金の合計額-2,000円)x40%を所得税額から差し引く(所得税額の25%が上限) | 税額控除対象法人であることの証明書の写しと領収書 |
園が用意するもの — 証明書・領収書・寄付者名簿
寄付する側が控除を使うには、確定申告に、寄付を受けた法人が受領した旨・金額・受領年月日と、主たる目的である業務に関連する寄付である旨を証する書類と、その法人が対象法人である旨を所轄庁が証する書類の写しを添えます(所得税法施行規則47条の2第3項)。税額控除に使う証明書類には、寄付者の住所と氏名の記載も必要です(租税特別措置法施行規則19条の10の5第14項)。園の側で用意するのは、これらを満たす領収書と、所轄庁(幼稚園・認定こども園の学校法人では都道府県知事)が発行する証明書の写しです。
税額控除の対象になるための証明には、寄付者の数や寄付金の額といった絶対値の要件、または寄付金収入が経常収入に占める割合の相対値の要件があり、小規模な法人向けの特例も置かれています。文部科学省は、令和7年4月1日から実績判定期間が短縮される改正を案内しています。この証明には、寄付者名簿を事業年度ごとに作り、5年間保存しておくことも要件に入っています(租税特別措置法施行規則19条の10の5第4項)。証明の申請から発行までは時間がかかり、文部科学省の案内では原則として発行の3か月前までの申請とされています。募集の時期から逆算して、早めに所轄庁の窓口で確かめてみてください。
入園の書類と一緒に寄付の案内を送っていないでしょうか。募る前に、次の4つを整えてみましょう。
寄付を募る前に園が整える4つのこと
証明を確かめる
特定公益増進法人の証明書と、税額控除の対象法人の証明の有無・有効期間を所轄庁に確認する。申請するなら募集の数か月前に動く
募集の時期と条件を決める
入園の手続き書類に寄付の案内を同封する形は、入園決定後の募集にならず控除の対象外になる。募るなら入園手続きが終わってから、在園児の保護者と同じ条件で案内する
領収書の様式を決める
法人名・受領した旨・金額・受領年月日・主たる目的の業務に関連する寄付である旨・寄付者の住所と氏名を書く欄を設け、証明書の写しを添えて渡せるようにする
寄付者名簿を残す
事業年度ごとに作成し、5年間保存する
法人からの寄付 — 別枠の損金算入と、私学事業団を通す方法
会社から園への寄付は、特定公益増進法人に対する寄附金として、一般の寄附金とは別枠の損金算入限度額の中で損金にできます。限度額は、期末の資本金と資本準備金の合計額(12か月決算の場合)に0.375%を掛けた額と、所得の金額に6.25%を掛けた額を合計し、2分の1を掛けた額です(法人税法施行令77条の2第1項1号)。会社の側では、確定申告書に寄附金の明細書を添え、寄付が学校法人の主たる目的の業務に関連する寄付である旨をその学校法人が証する書類などを保存します。
このほか、日本私立学校振興・共済事業団を通じて寄付する受配者指定寄付金の仕組みでは、会社は支出した寄付金の全額を損金に算入できると文部科学省が案内しています。大口の寄付を法人から受ける見込みがあるときは、この経路も選択肢に入ります。
土地や建物などの現物の寄付は、寄付する側に課税が生じることがある
金銭でなく土地・建物・株式などを個人から寄付してもらう場合、寄付した側では時価で譲渡したものとみなされ、値上がり益に所得税がかかることがあります(所得税法59条1項)。学校法人への寄付が教育の振興に寄与し、その財産が2年以内に園の事業に直接使われる見込みであることなどを国税庁長官が認めた場合には、この課税はされません(租税特別措置法40条1項)。現物の寄付の申し出があったときは、受け入れる前に手続きを確かめてください。
出典
- e-Gov法令検索 所得税法78条(寄附金控除)・59条(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)
- e-Gov法令検索 所得税法施行令217条(公益の増進に著しく寄与する法人の範囲)
- e-Gov法令検索 所得税法施行規則47条の2(確定所得申告書に添付すべき書類等)
- 国税庁 所得税基本通達78-2(入学に関してする寄附金の範囲)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法41条の18の3(公益社団法人等に寄附をした場合の所得税額の特別控除)・40条(国等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税)
- e-Gov法令検索 租税特別措置法施行規則19条の10の5(公益社団法人等に寄附をした場合の所得税額の特別控除)
- e-Gov法令検索 法人税法37条(寄附金の損金不算入)
- e-Gov法令検索 法人税法施行令77条の2(特定公益増進法人に対する寄附金の特別損金算入限度額)
- 国税庁 タックスアンサー No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)
- 国税庁 タックスアンサー No.1266 公益社団法人等に寄附をしたとき
- 国税庁 タックスアンサー No.5283 特定公益増進法人に対する寄附金
- 文部科学省 私立学校関係税制
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