会社の経理や経営の経験がある方ほど、園の会計には最初戸惑います。この記事では、学校法人会計と企業会計の違いを、実務でつまずきやすい4つの点に絞って整理します。
学校法人会計と企業会計の違い — 会社の経理経験がある人がつまずく4つの点
この記事の要点
- いちばんの違いは目的。企業会計は利益の計算と報告、学校法人会計は教育を続けるための収支の管理
- 書類は対応関係で覚えると早い。損益計算書にあたるのが事業活動収支計算書
- 企業会計にない独自の仕組みが基本金。「維持が先、成果はその後」という順番だけは新しく学ぶ
つまずき1 — 「利益」を出すための会計ではない
企業会計は、1年間の利益を計算して株主などの関係者に報告するための仕組みです。一方、学校法人には利益を配当する相手がいません。園の決算で黒字が出たとき、これは何を意味するのだろうと考えたことはありませんか。
学校法人会計が見ているのは、教育を安定して続けられる収支になっているかです。事業活動収支計算書の収支差額がプラスであることは、配るための利益ではなく、園を続ける体力の積み増しを意味します。
同じ「黒字」でも意味づけがまったく違う — ここが読み替えの出発点です。
つまずき2 — 書類の名前と対応関係
書類は、慣れた企業会計との対応で覚えるのが早道です。
| 企業会計 | 学校法人会計 | 見るもの |
|---|---|---|
| 損益計算書 | 事業活動収支計算書 | 1年間の活動の成果 |
| 貸借対照表 | 貸借対照表 | 年度末の財産の状態 |
| キャッシュ・フロー計算書 | 資金収支計算書 | 1年間のお金の出入り |
事業活動収支計算書は「教育活動」「教育活動外」「特別」の3つの区分でできています。損益計算書の営業損益・営業外損益・特別損益の並びを知っている方なら、構えはすぐつかめます。
つまずき3 — 基本金という独自の仕組み
企業会計の知識がそのまま通用しないのが、基本金です。
学校法人会計は、活動の成果を計算する前に、園舎・設備など教育を続けるのに必要な元手をまず確保する (基本金に組み入れる) という順番を取ります。企業会計の利益処分とは発想の向きが逆で、「維持が先、成果はその後」です。
このため、園舎を建てた年などは基本金組入額が大きくなり、当年度収支差額がマイナスに見えることがあります。企業会計の感覚でそのまま「赤字」と読むと、経営判断を誤ります。
つまずき4 — 科目と様式の作法が省令で決まっている
減価償却の考え方そのものは企業会計と共通です。園舎や設備の取得額を、使う年数に配分していきます。
一方で、科目の名前や計算書類の様式は省令である学校法人会計基準で定められ、知事所轄の法人にはさらに所轄庁 (都道府県) の指示があります。収益・費用ではなく「収入」「支出」「収支差額」という言葉で組み立てられている点も、慣れるまで読みにくいところです。
会社の感覚で科目を選ぶと年度ごとにぶれが生じ、監査でも指摘の種になります。園でよく出る取引は、科目の対応表を作って固定しておくのが安全です。
経験は無駄にならない — 必要なのは読み替えの地図
ここまで違いを並べましたが、企業会計の経験は園の会計で大きな武器になります。複式簿記も、証ひょうの整理も、月次で締める習慣も、そのまま活きます。
必要なのは、違う部分の「読み替えの地図」だけです。ご自身の園の計算書類を、上の対応表を片手に読み直してみてください。見え方が変わるはずです。
Q. 会社で使っていた会計の感覚で仕訳してよいですか。
複式簿記の考え方は共通ですが、科目と様式は学校法人会計基準に従います。学校法人会計用の科目体系に沿って入力し、迷う取引は監査人や顧問に確かめるのが安全です。
Q. 「収支の均衡」とは、毎年トントンにすることですか。
毎年ぴったり同額にする意味ではありません。教育を続けるのに必要な元手を維持しながら、収入の範囲で活動が賄えている状態を指します。単年度ではなく数年の推移で見るのが実務の読み方です。
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