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職員の社会保険料はどう決まるか 私学共済の標準報酬月額・標準報酬基礎届・賞与

「掛金が9月から変わりました」と給与明細を見た職員から聞かれて、理由を説明できるでしょうか。学校法人の園の教職員は、協会けんぽではなく私学共済(私立学校教職員共済制度)に入ります。掛金は毎月の給与額そのものではなく「標準報酬月額」という区分で決まり、9月には掛金率そのものも動きます。この記事では、私学共済を前提に、その決まり方と園の年間の手続きを整理します。

この記事の要点

  • 学校法人が設置する園の教職員は私学共済の加入者。健康保険にあたる短期給付と、厚生年金・退職等年金給付を、私学事業団が一体で扱う(私立学校教職員共済法14条・20条)
  • 掛金は毎月の給与の実額ではなく、報酬月額を等級に当てた「標準報酬月額」で決まる。毎年7月に4〜6月の報酬を届け出て(標準報酬基礎届書)、9月から翌年8月までの標準報酬月額が決まる(同法22条)
  • 賞与は別に「標準賞与額」で掛金を計算する。年金等の分は支給月ごとに150万円(同じ月に複数回払えば合算)、短期給付等の分は年度累計573万円が上限(同法23条)

園の教職員は「私学共済」— 協会けんぽとの違い

私立学校法の学校法人に使用され、報酬を受ける教職員は、私学共済制度の加入者になります(私立学校教職員共済法14条)。制度を管掌するのは日本私立学校振興・共済事業団(私学事業団)です(同法2条)。学校法人が設置する幼稚園・認定こども園の教職員は、保育教諭を含めて原則として全員がこの加入者です。設置者が学校法人でない園は対象外になることがあるので、私学事業団に確認します。

一般の会社のように協会けんぽと日本年金機構に分かれておらず、健康保険にあたる「短期給付」、厚生年金、私学共済独自の「退職等年金給付」を私学事業団が一体で扱います。保険料は「掛金等」と呼び、加入者と学校法人が折半で負担します(同法27条・28条)。標準報酬月額と標準賞与額を基準に計算する点は、会社の社会保険と同じ考え方です。

令和8年度の掛金等率(甲種加入者・加入者と学校法人の負担を合わせた率・私学事業団の掛金等率表)
区分令和8年4月〜8月令和8年9月〜令和9年3月
短期給付分8.771%8.771%
子ども・子育て支援金分0.23%0.23%
介護分(40歳以上65歳未満)1.554%1.554%
福祉事業分0.250%0.250%
退職等年金給付分1.20%1.20%
厚生年金保険(長期)17.097%17.451%

厚生年金の分は、令和8年9月から率そのものが上がります。「9月から掛金が変わる」理由は、次に見る標準報酬月額の決め直しと、この率の改定の2つが重なるためです。

掛金は「標準報酬月額」で決まる

掛金等は、加入者ごとに決まる標準報酬月額に掛金等率を掛けて計算します。標準報酬月額は、報酬月額を等級表に当てて決めるものです(私立学校教職員共済法22条)。報酬月額が数千円動いても等級が同じなら掛金は変わらず、等級の境目をまたぐと変わる、という段階の仕組みです。

等級表は年金等の分と短期給付等の分で別々です。私学事業団の標準報酬月額表では、年金等の分は第1級88,000円から第32級650,000円までの32等級です。

短期給付等の分は第1級58,000円から始まり、第50級1,390,000円まであります。園の給与水準では、年金等の分の上限に届く人はまずいません。

ここでいう報酬には、基本給だけでなく、勤務の対償として受ける手当(扶養手当・通勤手当・残業手当など)も含みます(同法21条)。食事や住宅など現物で受ける分も、その地方の時価で金額に直して報酬に含めます(同21条3項)。処遇改善等加算の手当を月々の給与に上乗せしている園では、その分も報酬月額に入るので、等級が1つ上がることがあります。

標準報酬基礎届書 — 4〜6月の報酬で、9月から翌年8月までを決める

毎年7月1日現在の加入者について、4月・5月・6月に受けた報酬の総額を月数で割った額を報酬月額とし、標準報酬月額を決め直します(私立学校教職員共済法22条5項)。決まった標準報酬月額は、その年の9月から翌年8月までの各月に使われます(同22条6項)。これが「9月から掛金が変わる」もう1つの理由です。

報酬支払の基礎となった日数が17日未満の月は計算から除きます(短時間労働加入者は11日)。途中入社などで1か月分の給与が出ていない月も、私学事業団のQ&Aでは算定の対象から除きます。パートタイマーで4〜6月に日数を満たす月が1つも無いときは、従前の等級のまま決まります。私学事業団の案内では、令和8年の標準報酬基礎届書の提出期限は7月10日です。6月1日から7月1日までの間に加入者の資格を取得した人は、その年の定時決定の対象になりません(同22条7項)。

標準報酬月額が決まる3つの場面
場面いつの報酬を見るかいつから使うか
定時決定(標準報酬基礎届書)4月・5月・6月の報酬(支払基礎日数17日以上の月)その年の9月から翌年8月まで
随時改定固定的な給与が変わった月からの継続した3か月(各月17日以上)3か月目の翌月から
賞与賞与を支払った月その月の標準賞与額として別枠

採用したときは、採用時の報酬で標準報酬月額を決めます(同法22条8項)。この額は採用した月からその年の8月まで、6月1日から12月31日までに採用した人は翌年の8月まで使います(同22条9項)。

随時改定 — 給与が大きく動いたら年の途中でも変わる

昇給や勤務時間の変更で固定的な給与が変わり、継続した3か月間(各月とも支払基礎日数17日以上)の報酬の平均が、それまでの標準報酬月額の基礎になった報酬月額と比べて著しく高低を生じたときは、その3か月目の翌月から標準報酬月額を改定します(私立学校教職員共済法22条10項)。私学事業団の案内では「2等級以上増減したとき」が目安です。改定された標準報酬月額は、その年の8月まで(7月から12月に改定されたものは翌年の8月まで)使われます(同22条11項)。

園の実務では、年度替わりの昇給、処遇改善の手当の改定、パート職員の勤務時間の増減が随時改定の典型です。給与を変えたら「3か月後に等級が動くか」を給与計算の予定表に書いておくと漏れません。

産前産後休業や育児休業から復帰した職員については、本人の申出により、復帰後3か月の報酬の平均で標準報酬月額を改定できます(同法22条)。復帰して勤務時間を短くした職員は報酬が下がるので、この申出を忘れると高い等級のまま掛金を払い続けることになります。

賞与 — 標準賞与額で別に計算する

賞与を支払った月は、賞与額の千円未満を切り捨てた「標準賞与額」を決め、これに掛金等率を掛けます(私立学校教職員共済法23条)。上限が別々で、年金等の分は支給月ごとに150万円(同じ月に複数回払ったときは合算した額で判定)、短期給付等の分は年度(4月1日から翌年3月31日)の累計で573万円です。園の賞与でこの上限に届くことはまれですが、処遇改善の一時金を年に数回まとめて払う園では、それが賞与として扱われる点に気をつけてください。3か月以内の間隔で受けるものは賞与ではなく報酬として扱われ、月額の計算に入ります(同法21条)。ただし私学事業団のQ&Aでは、その年に限り支給したことが明らかな賞与は、年間の支給回数に数えません。

年間の流れを、一度予定表に落としてみましょう。

園の私学共済の年間の手続き

  1. 4〜6月

    報酬の集計に手当・通勤手当を含める。支払基礎日数を月ごとに確かめる

  2. 7月1日〜10日

    標準報酬基礎届書を私学事業団へ提出する。6月1日以降の資格取得者は対象外

  3. 9月

    決まった標準報酬月額と改定後の掛金等率を給与計算に反映し、職員に掛金が変わる理由を伝える

  4. 年の途中

    昇給・勤務時間の変更があれば3か月後の随時改定を見る。賞与は支払月に標準賞与額で計算する

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