令和8年4月から、こども誰でも通園制度は子ども・子育て支援法に基づく給付として全国で始まりました。幼稚園で受け入れを始めた園の事務長から「学校法人の決算書のどこに載せればいいのか」と聞かれることが増えています。この記事では、法令が求める「会計の区分」と、学校法人向けに示された取り扱いを整理します。
こども誰でも通園制度の会計 — 乳児等通園支援事業の収支報告書と部門区分(令和8年度から)
この記事の要点
- 法令は乳児等通園支援事業の会計をほかの事業と区分するよう求めている(特定乳児等通園支援事業の運営に関する基準31条)。ただし学校法人が幼稚園で行う場合は、計算書に部門を設けて表示しなくてよい(令和8年3月30日の事務連絡)
- 代わりに、この事業の収入と支出が分かる収支報告書を別に作る。作成例は事務連絡の別添1に示され、市区町村の監査で内訳が判別できる形にしておく
- 給付費・補助金・利用料の3つの収入と、人件費・事業費・事務費の支出を日々の記帳から分けておけば、報告書は決算とは別に組める
制度のおさらい — 令和8年度から「給付」になった
こども誰でも通園制度は、令和7年度までは地域子ども・子育て支援事業として試行され、令和8年度から子ども・子育て支援法に基づく新たな給付として全国の自治体で実施されています。財源は子ども・子育て支援金です。
法律では「乳児等のための支援給付」として、乳児等支援給付費と特例乳児等支援給付費の支給が定められています(子ども・子育て支援法30条の12)。事業を行う園は市町村長の確認を受け、事業所ごとに利用定員を定めます(54条の2)。給付費は1時間当たりの費用の額に利用した時間を乗じて算定する仕組みで、施設型給付とは別の給付です(30条の20)。
制度そのものの中身は、次の記事で整理しています。ここからは「お金の記録」に絞って見ていきましょう。
法令は「会計の区分」を求めている
令和8年4月に施行された特定乳児等通園支援事業の運営に関する基準は、事業者に対し、特定乳児等通園支援事業の会計をその他の事業の会計と区分しなければならないと定めています(同基準31条)。
学校法人の会計では「部門」という区分があり、幼稚園部門と法人部門のように分けて内訳表を作ります。乳児等通園支援事業のために、新しい部門を立てる必要があるのでしょうか。
学校法人が幼稚園で行うときは、部門を設けなくてよい
この点について、文部科学省幼児教育課とこども家庭庁保育政策課は令和8年3月30日付けの事務連絡「乳児等通園支援事業(こども誰でも通園制度)に係る学校法人における会計に関する表示について」で考え方を示しました。
つまり、決算書の部門は増やさずに、この事業だけを切り出した収支報告書を別に用意する、という形です。ただし、事務連絡は参考として示されたもので、各自治体が現在使っている様式や取り扱いを妨げないとも書かれています。自治体によっては予算書の段階から部門の区分を指示している例もあるので、園を所管する市区町村の様式や指示があれば、そちらが優先です。
なお、この「部門を設けなくてよい」という整理は学校法人向けのものです。社会福祉法人が保育所で同じ事業を行う場合は、社会福祉法人の会計の決まりに沿って新しいサービス区分を設けて区分経理する扱いになるため、法人の種類が違えば答えも変わります。
別添1の作成例には、次のような科目が並んでいます。
| 区分 | 科目 |
|---|---|
| 収入 | 乳児等通園支援事業収入(給付費・補助金・利用料)、実費徴収、受取利息・配当金収入、雑収入 |
| 支出 | 人件費支出(役員報酬・職員給料・職員賞与・非常勤職員給与)、事業費支出(給食費・保健衛生費・保育材料費・水道光熱費・保険料・賃借料)、事務費支出(旅費交通費・研修研究費・事務消耗品費・印刷製本費・通信運搬費・会議費・広報費・雑支出)、支払利息支出 |
作成例には、市区町村等の監査において内訳が明確に判別できるよう記載すること、根拠となる証憑は内部規程に基づいて保管することも添えられています。
大臣所轄の法人には別の通知がある
大学などを設置する文部科学大臣所轄の学校法人には、令和8年2月26日付けの通知(7高私行第30号)が出ています。乳児等通園支援事業が付随事業の規模(全付随事業に関する収入が学校法人全体の事業活動収入の30/130未満)の範囲内なら付随事業として扱い、寄附行為への記載や会計で部門を設けて表示することを要しない、という内容です。
園を運営する知事所轄の学校法人はこの通知の宛先ではありませんが、「部門を設けず、収支が分かる形で管理する」という方向は事務連絡と同じです。
園の実務 — 記帳の段階で分けておく
収支報告書は年度末に作るものですが、材料は日々の記帳です。次の順で整えてみてください。
乳児等通園支援事業の収支を切り出す4つの段取り
科目の枝を作る
会計ソフトに乳児等通園支援事業用の補助科目か部門コードを用意し、給付費・補助金・利用料を分けて入金を記録する
支出の紐づけを決める
保育材料費や給食費など、この事業のためだけに使った支出はその科目へ。共通で使うものは按分の考え方を先に決める
人件費の根拠を残す
従事した職員と時間が分かる記録(勤務表・シフト)を残し、按分の根拠にする
年度末に報告書へ組む
市区町村の様式があればそれに合わせ、無ければ別添1の例にならって収入と支出を並べる
ご相談・お見積りは無料です。現在の先生に知られることはありません。
交代のご相談 (無料・守秘義務あり) →※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する助言ではありません。内容は執筆時点の法令・通知等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、公認会計士等の専門家にご相談ください。