決算を見てもらっている税理士に、園の監査もまとめて頼めないかと考える理事長・事務長の方へ。監査を引き受けられる資格と、同じ法人から税理士業務の報酬を受けている人が監査をできない決まりを、条文に沿って整理します。
顧問税理士に園の監査も頼めるか — 公認会計士法24条・施行令7条と私立学校法81条の独立性
この記事の要点
- 財務書類の監査証明は公認会計士の業務で、学校法人の会計監査人も私立学校振興助成法の監査も公認会計士か監査法人が行う1
- 公認会計士でも、監査をする法人から税理士業務など監査以外の業務で継続的な報酬を受けていると著しい利害関係に当たり、その法人の監査証明はできない2
- 顧問の事務所と監査の事務所は分けて頼む。両方の資格を持つ先生でも、顧問を続けるか監査人になるかのどちらかを選ぶ
根拠:1公認会計士法2条1項・私立学校法81条1項・私立学校振興助成法14条2項2公認会計士法24条1項3号・公認会計士法施行令7条1項6号
監査証明は公認会計士の業務 — 税理士の資格だけでは引き受けられない
公認会計士は、他人の求めに応じ報酬を得て財務書類の監査または証明をすることを業とします1。学校法人の会計監査人は公認会計士か監査法人でなければならず2、評議員会の決議で選任します3。私立学校振興助成法の補助金を受ける学校法人が受ける計算書類の監査も、公認会計士か監査法人の監査です4。
根拠:1公認会計士法2条1項2私立学校法81条1項3同80条1項4私立学校振興助成法14条2項
施設型給付を受ける園が任意で導入する外部監査も同じです。外部監査費加算の対象は、公認会計士または監査法人による外部監査とされています(FAQ No.37)。これらの監査はどれも公認会計士か監査法人が行うものとされていて、税理士の資格だけでは引き受けられません。
顧問税理士の役割と監査人の役割は別で、園の側に立って決算を作る支援と、できた計算書類を外から確かめる仕事は分かれています。この整理は別の記事にまとめています。ここでは、公認会計士の資格を持つ人であっても監査を引き受けられない関係を見ていきます。
著しい利害関係 — 税理士業務の継続的な報酬は監査の禁止事由
公認会計士は、次の法人の財務書類について監査証明の業務をしてはなりません1。自分や配偶者が役員や財務の責任ある担当者である法人、自分が使用人である法人 (どちらも過去1年以内を含む)、著しい利害関係を有する法人です。著しい利害関係の中身は政令で定められています2。
政令は、公認会計士または配偶者が、監査を受けようとする法人から税理士業務その他の監査証明業務・非監査証明業務以外の業務により継続的な報酬を受けている場合を、著しい利害関係に挙げています3。顧問税理士として毎月の報酬を受けている公認会計士は、その法人の監査証明をできないということです。
監査法人に頼むときも同じです。政令は、監査法人の社員のうちに、監査を受けようとする法人から税理士業務により継続的な報酬を受けている者がいる場合を、監査法人に係る著しい利害関係に挙げています4。顧問の先生が社員になっている監査法人には、担当の社員を替えても、その法人の監査を頼めないということです。
| 関係 | 根拠 | 園での例 |
|---|---|---|
| 本人や配偶者が役員・財務の責任ある担当者 (過去1年以内を含む) | 5 | 理事・監事・事務長を兼ねている、配偶者が理事 |
| 本人が評議員 (会計監査人になる場合) | 文部科学省の説明資料 | 園の評議員を務めている |
| 本人が使用人 (過去1年以内を含む) | 6 | 園の職員だった人 |
| 監査関係期間内に役員等であった | 7 | 年度の途中まで理事だった人 |
| 配偶者が使用人 (過去1年以内を含む) | 8 | 配偶者が園の職員として働いている |
| 事務所や資金の提供などの特別の経済上の利益を受けている | 9 | 園の建物を無償で事務所として借りている |
| 税理士業務など監査以外の業務で継続的な報酬を受けている | 3 | 税務顧問、給与計算や社会保険の手続きの受託 |
| 役員等から上の利益や報酬を受けている | 10 | 理事長の個人の確定申告を毎年受けている |
計算書類の作成や記帳の代行は公認会計士の業務のうちの財務書類の調製に当たり11、6号の文言にはそのままは当たりません。文部科学省の説明資料のQ&Aは、大会社等から非監査証明業務で継続的な報酬を受ける公認会計士の監査証明を禁じる公認会計士法の制限について、学校法人は大会社等に当たらないため適用されないとしています。ただ同じQ&Aは、監査証明業務と非監査証明業務を同時に提供するときは独立性を害さないよう留意が必要としています。
根拠:1公認会計士法24条1項2同24条2項3公認会計士法施行令7条1項6号4同15条5号5公認会計士法24条1項1号6同24条1項2号7公認会計士法施行令7条1項1号8同7条1項2号9同7条1項5号10同7条1項7号11公認会計士法2条2項
作った書類を自分で確かめる形になるので、監査は作成に関与していない公認会計士に頼むことをお勧めします。顧問の事務所に公認会計士がいる園は、誰がどの報酬を受けているかを一度書き出してみてください。
私立学校法と助成法の決まり — 会計監査人・子法人・内訳表の監査
私立学校法は、会計監査人になれない者を3つ挙げています1。公認会計士法の規定により計算書類を監査できない者、学校法人の子法人や子法人役員から公認会計士・監査法人の業務以外の業務で継続的な報酬を受けている者とその配偶者、社員の半数以上がそうした者である監査法人です。監査先の本体だけでなく、子法人からの税理士業務の報酬も欠格事由です。このほか文部科学省の説明資料は、学校法人の役員や評議員も会計監査人になれないとしています。
会計監査人は、職務を行うに当たって、これらの者や、その学校法人の役員・職員、学校法人や子法人から業務以外の業務で継続的な報酬を受けている者を使用してはなりません2。監査チームの補助者にも同じ線が引かれています。
文部科学省の説明資料のQ&Aは、監事と会計監査人は兼務できないとしています。また、私立学校振興助成法の内訳表の監査について、文部科学省の通知は、大臣所轄の学校法人が依頼する公認会計士等が著しい利害関係を有する者でないことを確認する必要があるとしています(6文科高第1457号)。有無の判断は、日本公認会計士協会の倫理規則を参考にするとされています(6文科高第1457号)。知事所轄の法人が受ける助成法の監査の内容は、所轄庁の定めによります(6文科高第1457号)。
園での段取り — 顧問と監査人を分けて頼む
次の順で進めてみましょう。
顧問と監査人を分ける段取り
候補を選ぶ
税務顧問・記帳代行・給与計算などを受けていない公認会計士か監査法人から選ぶ
利害関係を確かめる
役員・職員との兼務や過去1年以内の関係、継続的な報酬の有無を候補者に書面で確かめる1
契約の範囲を分ける
監査証明と税務の相談を同じ契約に入れない。日常の会計相談は顧問税理士に、監査は監査人に
選任の手続きを踏む
会計監査人を置く法人は評議員会の決議で選任する2。任意の外部監査は法人の規程に沿って契約する
根拠:1公認会計士法24条・公認会計士法施行令7条2私立学校法80条1項
| 確認する関係 | 候補者本人 | 配偶者 | 確かめた方法・日付 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 法人の役員・財務の責任ある担当者 (現在・過去1年以内) | ||||
| 法人の評議員 (現在) | ||||
| 法人の職員 (現在・過去1年以内) | ||||
| 税理士業務など監査以外の業務の継続的な報酬 | ||||
| 記帳代行・計算書類の作成の受託 | ||||
| 事務所や資金の提供などの特別の経済上の利益 | ||||
| 役員からの個人的な業務の報酬 | ||||
| 子法人・子法人役員からの継続的な報酬 | ||||
| 監事との兼務 |
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