貸借対照表の負債に「退職給与引当金」という大きな数字があり、理事会で「これは何のお金か」と聞かれて答えに詰まった、という声を園の事務担当からよく聞きます。この記事では、園の退職金の仕組みと、引当金がどう計算されて計算書に載るのかを、国の通知と実務指針に沿って整理します。
園の職員の退職金と退職給与引当金 — 私学退職金団体と計算書での見え方
この記事の要点
- 退職給与引当金は、いま全職員が退職したら払う額(期末要支給額)の100パーセントを退職給与引当金として計上する(22高私参第11号)。積立方式の私学退職金団体に加入している園は、団体から交付される額を差し引いた園の負担分で計上する
- 私学退職金団体(積立方式)に加入している園は、団体から交付される額を差し引いた園の負担分だけを計上する。加入していない園も園が負担する部分の100パーセントが基本
- 退職給与引当特定資産は積んだお金、退職給与引当金は払う義務。両方がそろって初めて資金の裏付けがあると言える
園の退職金は「団体からの交付金 + 園の負担」の二本立て
多くの園は、都道府県ごとに設立された私学退職金団体に加入し、職員の給与に応じた掛金を納めています。職員が退職すると、団体から園に交付金が入り、園はそれと自己資金を合わせて退職金を支払います。
実務指針(学校法人委員会実務指針第44号)では、団体から受け取る交付金は大科目「雑収入」に小科目を設けて処理し、園が納める掛金などの負担金は大科目「人件費支出」の中に細分科目を設けて処理するとされています。積立方式の団体に加入している場合は、事業活動収支計算書で退職金と交付金を相殺して表示することもできます。ただし、特別交付金や清算交付金のような通常でない入金は、計上する区分と時期、相殺してよいかを別に確かめる必要があり、表示のしかたは団体の案内と所轄庁の運用も見ておきます。
引当金は「期末要支給額の100%」が基本
学校法人会計基準は、負債には債務額を付すと定めたうえで、退職給与引当金を含む引当金について、将来の事業活動支出に備えてその合理的な見積額のうち当年度の負担に属する金額を繰り入れて計上すると定めています(学校法人会計基準11条)。貸借対照表の科目としての退職給与引当金は、退職給与規程等による計算に基づく退職給与引当額とされています(同基準別表第一)。
いくら計上するかは、平成23年2月17日の文部科学省の通知(22高私参第11号)で統一されました。各法人の退職給与規程等に基づいて算出した退職金の期末要支給額の100パーセントを退職給与引当金として計上し、積立方式の私学退職金団体に加入している場合は各団体から交付される額を控除する、という内容です。通知は団体に加入していない場合も趣旨を踏まえて処理することを求めており、実務指針第44号は、独自の退職金制度でも園が負担する部分は期末要支給額の100%を計上すると説明しています。
| 項目 | 積立方式の団体に加入している園 | 加入していない園 |
|---|---|---|
| 引当金の計上額 | 期末要支給額の100%から団体の交付額を差し引いた園の負担分 | 園が負担する部分の期末要支給額の100% |
| 退職時の収入 | 団体からの交付金を雑収入に計上(退職金と相殺表示も可) | なし |
| 毎年の支出 | 掛金を人件費支出の細分科目で処理 | 引当金の繰入額のみ |
戻入額が出た年は、退職給与引当金戻入額として計上します。変更時差異を処理する退職給与引当金特別繰入額とは性格が異なるため、総額表示の原則により相殺できません(学校法人委員会実務指針第44号)。なお、当年度の見積りの変化ではなく、過年度の計算誤りで引当が過大・過少だったと分かった場合は、当年度の繰入額・戻入額ではなく、事業活動収支計算書の特別収支の過年度修正額として処理するのが基本です。過年度修正額は、前年度以前に計上した収入又は支出の修正額で当年度の収入又は支出となるものを指す科目です(学校法人会計基準別表第二)。
「特定資産」と「引当金」は別物
貸借対照表には「退職給与引当特定資産」という科目もあります。特定資産は使途が特定された預金等のことで(同基準別表第一)、退職金の支払いに備えて園が積み立てた預金がここに入ります。
引当金は負債の部にある「払う義務」、特定資産は資産の部にある「積んだお金」です。園の貸借対照表では、この2つはどのくらい離れているでしょうか。積み立てをしていなくても引当金の計上は必要で、逆に、引当金の額だけ特定資産を積む決まりがあるわけでもありません。ただし、望ましい姿は両者の残高が近いことで、差が大きい園は、退職者が重なった年に資金繰りが苦しくなります。
令和7年度から、引当金全般の決まりが明文になった
学校法人会計基準11条2項は、退職給与引当金のほかの引当金についても、合理的な見積額のうち当年度の負担に属する金額を繰り入れて計上すると定めています。文部科学省の通知(6高私参第27号)は、この規定が令和7年度から適用される改正で明文化されたものであり、将来の特定の事業活動支出で、発生が当年度以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、金額を合理的に見積もれる場合に当年度の負担分を繰り入れると説明しています。賞与引当金などを新たに計上する園は、退職給与引当金と同じ「見積もりの根拠」を用意する必要があります。
園の実務 — 決算で毎年やること
退職給与引当金は、毎年の決算で機械的に計算し直す科目です。次の順で確かめてみてください。
退職給与引当金の年度末の計算
期末要支給額を出す
退職給与規程に基づき、年度末時点で全職員が退職した場合の退職金を職員ごとに計算する。多くの園では自己都合退職を前提にした支給額で計算する
団体の交付見込額を確かめる
積立方式の団体に加入していれば、各職員について団体から交付される額を調べ、差し引く
残高との差額を繰り入れる
前年度末の引当金残高から当年度の退職による取り崩しを引き、期末の計算額との差を繰入額にする。差がマイナスなら戻入額で、繰入額と相殺せず別に表示する
注記に計上基準を書く
計算書類の注記「重要な会計方針」に退職給与引当金の計上基準を記載する
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