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園の法人税の申告と損益計算書等の提出 — 収益事業の有無の判定と年8,000万円超の提出義務

「うちの園は法人税の申告が要るのか」「収益事業が無ければ税務署に何も出さなくてよいのか」— 学校法人の税務でいちばん多い問いです。答えは、法人税法上の収益事業があるかどうかで申告の要否が決まり、無い園でも収入の規模によっては損益計算書等の提出が要る、というものです。この記事では、2つの「収益事業」の違い、確定申告と損益計算書等の提出の分かれ目、園でよくある収入の判定を整理し、収入ごとの判定表を写して使える形にまとめます。

この記事の要点

  • 学校法人は公益法人等で、法人税を納める義務があるのは収益事業を行う場合などに限られる。収益事業は販売業・製造業その他政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるもの1
  • 私立学校法の収益事業 (所轄庁が種類を定め、寄附行為に載せ、特別の会計で区分するもの) と、法人税法の収益事業 (政令の34種類への収入ごとの当てはめ) は別物。寄附行為に収益事業が無くても、法人税法の収益事業に当たる収入はあり得る2
  • 収益事業があれば事業年度終了の日の翌日から2か月以内に確定申告をする3。無くても、公益法人等は政令で定める法人を除き、損益計算書または収支計算書を4か月以内に所轄税務署長に提出する4

根拠:1法人税法4条1項・法人税法2条13号2私立学校法19条・法人税法施行令5条1項3法人税法74条1項4租税特別措置法68条の6

2つの「収益事業」— 私立学校法の収益事業と、法人税法の収益事業

私立学校法は、学校法人がその設置する私立学校の教育に支障のない限り、収益を私立学校の経営に充てるために収益を目的とする事業を行うことができるとしています。その種類は所轄庁が定め、その会計は特別の会計として区分して経理します1。寄附行為に載せ、所轄庁の公告した種類の中で行う、法人運営上の「収益事業」です。

法人税法の収益事業は、これとは別の物差しです。学校法人は法人税法の公益法人等に当たり、法人税を納める義務があるのは収益事業を行う場合などに限られます2。ここでいう収益事業は、販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるものをいい3、政令が物品販売業、不動産貸付業、請負業など34の事業を列挙しています4。寄附行為に収益事業が無い園でも、園が受け取る収入を1つずつこの34の事業に当てはめて判定する、という関係です。

根拠:1私立学校法19条2法人税法4条1項3同2条13号4法人税法施行令5条1項

2つの「収益事業」の違い
項目私立学校法の収益事業法人税法の収益事業
根拠私立学校法19条法人税法2条13号・法人税法施行令5条1項
何が該当するか所轄庁が定めた種類の事業で、寄附行為に載せたもの政令の34の事業に当たる収入で、継続して事業場を設けて行うもの (付随する行為を含む)
会計特別の会計として区分収益事業の所得に法人税がかかる
園での例寄附行為に「駐車場の経営」を載せて行う事業制服や教材の販売、施設の貸付など収入ごとに判定

収益事業があるとき — 2か月以内の確定申告と、みなし寄附金

法人税法の収益事業に当たる収入があれば、園は各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に、確定した決算に基づいて所得の金額と法人税の額などを記載した申告書を税務署長に提出します1。3月決算の園なら5月末が期限です。申告の対象は収益事業の所得だけで、施設型給付費や利用者負担額など教育・保育の収入には法人税はかかりません。

学校法人には、みなし寄附金の仕組みがあります。公益法人等がその収益事業に属する資産のうちから収益事業以外の事業のために支出した金額は、収益事業に係る寄附金の額とみなされます2。学校法人の場合、この寄附金の損金算入限度額は、その事業年度の所得の金額の100分の50に相当する金額で、その金額が年200万円に満たないときは年200万円です3。収益事業の利益を園の教育に回せば、その分は損金になる、という設計です。

根拠:1法人税法74条1項2同37条6項3法人税法施行令73条1項3号

原則

収益事業を行う学校法人は、各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に確定申告書を提出する。

法人税法74条1項

ただし

収益事業の資産から園の教育などのために支出した金額は寄附金とみなされ、所得の100分の50 (年200万円に満たないときは年200万円) までが損金になる。

法人税法37条6項・法人税法施行令73条1項3号

事実を隠蔽し、または仮装して経理をすることにより支出した金額は、寄附金とはみなされない。

法人税法37条6項

収益事業がないとき — 損益計算書等の提出

収益事業が無い園は法人税の申告書を出しません。ただし、公益法人等は、確定申告書を提出すべき場合を除き、その事業年度の損益計算書または収支計算書を所轄税務署長に提出しなければなりません。期限は事業年度終了の日の翌日から4か月以内で、小規模な法人として政令で定める法人と、他の法律で公益法人等とみなされる政令で定める法人は除かれます1。国税庁の案内 (C1-65 公益法人等の損益計算書等の提出) は、この提出が要るのは事業年度の収入金額の合計額が年8,000万円を超える法人だとしています。

根拠:1租税特別措置法68条の6

3月決算の園の法人税に関する期限

  1. 3月31日事業年度の末日
  2. 5月31日収益事業がある園の法人税の確定申告 (事業年度終了の日の翌日から2か月以内)
  3. 6月30日計算書類等の作成の期限。会計年度終了後3か月以内(私立学校法103条2項)
  4. 7月31日収益事業が無く収入が年8,000万円を超える園の損益計算書等の提出 (4か月以内)

法人税の申告の期限は決算の理事会より早く来るので、申告が要る園は理事会の日程を5月中に組みます。

園でよくある収入の判定 — 国税庁の見解を先に見る

園の収入の判定で先に確かめたいのが、国税庁の個別通達 直法2-7 (昭和58年6月3日)「幼稚園が行う各種事業の収益事業の判定について」です。この通達は、幼稚園が行う各種の事業について収益事業になるかどうかの判定を表で示しています。絵本やワークブックの頒布は非収益事業、工作道具・文房具・楽器・制服・体操着などの販売は収益事業としたうえで、原価 (または原価に所要の経費をプラスした程度の価格) によることが明らかなものは非収益事業としています。園児 (関係者を含む) を対象とする実費弁償方式のものは、税務署長の確認を条件に非収益事業とできるとしています。

園でよくある収入と法人税法上の判定の考え方
収入判定の考え方
施設型給付費・利用者負担額・実費徴収教育・保育の収入で、収益事業ではない
絵本・ワークブックの頒布直法2-7 の判定表で非収益事業
制服・体操着・文房具・楽器の販売原則は物品販売業。原価によることが明らかなものは非収益事業
実費弁償方式の物品の頒布税務署長の確認を条件に非収益事業
園庭や駐車場の貸付、施設の時間貸し不動産貸付業などに当たり得る。継続して行うかで判定。国や地方公共団体に直接貸し付ける不動産の貸付業は不動産貸付業から除かれ、園が主たる目的とする業務に関連して行う席貸し (娯楽・遊興・慰安の用に供するものを除く) は席貸業から除かれる
園児のうち希望者を対象とする音楽教室のための教室の席貸し直法2-7 の判定表で非収益事業 (席貸業のかっこ書)
園児に対する課外授業としての音楽教室の開設直法2-7 の判定表で技芸教授業として収益事業
預かり保育・一時預かりの利用料教育・保育の一環かどうかを、市町村の事業の位置づけと合わせて確かめる

原則

施設の貸付は、継続して事業場を設けて行えば、不動産貸付業や席貸業として収益事業に当たり得る。

法人税法施行令5条1項

ただし

国または地方公共団体に対し直接貸し付けられる不動産の貸付業など、政令が列挙する貸付は不動産貸付業から除かれる。

法人税法施行令5条1項5号

学校法人がその主たる目的とする業務に関連して行う席貸業は、収益事業となる席貸業から除かれる。不特定または多数の者の娯楽・遊興・慰安の用に供するための席貸業は、この除外の対象にならない。

法人税法施行令5条1項14号

判定に迷う収入は、園の顧問税理士か税務署に確かめてから申告の要否を決めてください。同じ収入でも、価格の決め方 (原価か、利益を乗せるか) で結論が変わるのが、園の物品販売の特徴です。

園の収入の収益事業判定表
収入の科目中身 (誰から・何の対価か)価格の決め方 (原価・実費・利益あり)法人税法上の判定 (非収益・収益・要確認)判定の根拠確認した日

園の会計や監査の準備で迷うところがあれば、無料相談でお聞きください。

まとめ — 判定・申告・提出の3段

園の法人税は、収入ごとに法人税法の収益事業に当たるかを判定し、当たる収入があれば2か月以内に確定申告、無くても収入が年8,000万円を超えれば4か月以内に損益計算書等を提出する、という3段で整理できます。私立学校法の収益事業の有無は、この判定とは別の話です。

まずは決算書の収入の小科目を判定表に書き出してみてください。あなたの園の収入の一覧に、価格の決め方を書いた欄はあるでしょうか。

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