「12月になって公定価格の単価が上がり、4月分まで遡って差額が入ると言われたが、職員にはどう配ればよいのか」— 施設型給付を受ける幼稚園・認定こども園で、毎年この時期に同じ戸惑いが起きます。この記事では、人事院勧告が公定価格に反映される流れを、令和8年8月に出た勧告の内容と、直近の令和7年度の実例(人件費+5.3%・4月への遡及)をもとに整理します。令和8年度分の改定率と支払いの段取りはまだ示されていないため、令和7年度の実例を「今年度もこう動く」見取り図として使います。
人事院勧告で公定価格はどう変わるか — 年度途中の改定・4月への遡及支給・園がする給与の見直し(令和8年の勧告と令和7年度の実例)
この記事の要点
- 公定価格の人件費は国家公務員の給与に準じて算定されるため、毎年8月の人事院勧告が補正予算を経て年末に単価へ反映され、4月分まで遡って引き上げられる
- 令和8年の勧告(8月7日)は、月例給+3.51%とボーナス4.65月から4.70月への引き上げ。公定価格の人件費の改定率は補正予算で決まり、本記事の時点(令和8年9月)では公表されていない
- 直近の令和7年度は人件費が+5.3%改定され、市町村には3月中の支弁、園には3月中(遅くとも夏季の賞与まで)の職員への支払いが求められた。改定分は全額を人件費に充てるが、「職員の給与が一律に+5.3%になる」のではない
公定価格の人件費は「国家公務員の給与に準じて」決まる
公定価格は、人件費・事業費・管理費を費目ごとに積み上げて算定されており、そのうち人件費の額は国家公務員の給与に準じて決められています。国家公務員の給与は毎年8月の人事院勧告で改定されるため、勧告の内容が補正予算で予算に反映されると、公定価格の人件費も同じ向きに動きます。
流れは毎年ほぼ同じです。8月に勧告が出て、12月ごろに補正予算が成立し、こども家庭庁から改定後の単価が示され、国家公務員と同じく4月分まで遡って公定価格が引き上げられます。園から見ると「年度の終わりに、その年度分の差額がまとめて入る」形になります。
| 年 | 人件費単価の改定率 |
|---|---|
| 令和4年 | +2.1% |
| 令和5年 | +5.2% |
| 令和6年 | +10.7% |
| 令和7年 | +5.3% |
| 令和8年 | 未公表(勧告は8月7日に出ている。改定率は補正予算の成立後にこども家庭庁から示される) |
令和8年の勧告は8月7日に出ました。内容は、官民較差15,056円(3.51%)を埋める月例給の引き上げ(行政職俸給表(一)の平均改定率は3.3%で、中堅層以上に重点)と、ボーナスを年間4.65月から4.70月へ引き上げるもので、いずれも令和8年4月に遡って実施されます。公定価格の人件費の改定率は、この勧告を補正予算に反映した時点でこども家庭庁から示されます。
4年続けて引き上げが続き、令和8年の勧告も引き上げの内容です。園の収入に占める人件費の割合を考えると、この年末の改定は毎年の収支の見通しを左右する大きな項目です。
令和7年度の実例 — 補正予算で+5.3%、4月分まで遡って支払い
令和8年度の改定分については、改定率も、市町村への支弁や職員への支払いの時期の要請も、本記事の時点ではまだ示されていません(例年、12月の補正予算の成立後にこども家庭庁の事務連絡で示されます)。ここでは、園がこれから迎える段取りの見取り図として、直近の令和7年度の実例をそのまま示します。率と日付は、令和8年度の事務連絡が出たら差し替えて読んでください。
令和7年の人事院勧告は、俸給月額を若年層に重点を置きつつ引き上げ、ボーナスを0.05月分引き上げる(4.6月から4.65月へ)内容でした。これを踏まえた令和7年度補正予算では、子どものための教育・保育給付交付金に844億円が計上され、保育士・幼稚園教諭等の人件費を+5.3%改定したうえで、令和7年4月まで遡って公定価格が引き上げられました。
同じ補正予算では、物価高騰への対応として「運営継続支援臨時加算」が令和7年度限りで創設され、保育所・認定こども園・幼稚園(新制度に移行している園に限る)に1施設あたり年額10万円が加算されています。年度末の入金には、人件費の改定分とこの臨時加算の両方が含まれている園が多いはずです。
令和7年度の改定分が園に届くまで(こども家庭庁の事務連絡の要請事項)
12月に単価が示される
補正予算の成立後、改定後の単価がこども家庭庁から示される
市町村が改定分を算出して周知する
施設の情報をもとに市町村が改定分を算出し、施設に知らせる(算出支援は市町村の約69%が協力)
市町村が3月中に支弁する
可能であれば国からの交付より早く、3月中に施設へ給付費を支弁する
園が職員に支払う
3月中に職員へ改定分を支払う。遅くとも夏季の賞与(夏季の賞与がない場合は7月中)までに支払う
園がすること — 全額を人件費に、そして職員への説明
こども家庭庁の事務連絡は、改定分の使途を「全額を人件費とすること」とし、基本はベースアップによる差額分を一時金等で支払うことを基本としつつ、その他の方法も妨げないとしています。対象者は通常の教育・保育に従事する職員全てが対象になり得るとされ、対象者や支払う額が恣意的に偏らないことも求められています。
もう一つ大事なのが職員への説明です。事務連絡は、単純に職員の給与が+5.3%になるものではないところ、改定分の趣旨や内容等を職員に説明することを園に求め、説明用のリーフレットを国が作って配布しています。「聞いていた率と手取りが違う」という不満は、ここを飛ばしたときに生まれます。
改定分は令和8年度以降の公定価格にも引き続き織り込まれるため、年度末の一時金で終わりにせず、翌年度の給与表や給与規程を改定する準備につなげます。処遇改善等加算の区分2・区分3では、改善額の1/2以上を基本給か毎月決まって支払う手当で行う要件があるので、一時金の割合が大きくなりすぎていないかも翌年度の設計で確かめておきたいところです。
会計と監査で見られる点 — 入金と支払いの年度、賃金台帳との突合
外部監査では、年度末に入った改定分の額と、職員への支払いの記録が突き合わせられます。市町村から示された改定分の額、給付費の入金、賃金台帳の支払額、この3つが一続きで追えるようにしておけば、監査での説明はそれで足ります。
支払いが翌年度(夏季の賞与)にずれる園では、年度末時点で支払う額が決まっているかどうかで扱いが変わります。3月31日の時点で支給の決定が効力を持ち、職員ごとの金額が確定している分は、年度末に未払金として計上し、収入と同じ年度に人件費を載せます。反対に、3月31日時点で決定も金額も確定していない分は未払金に計上できず、実際に支払う翌年度の費用になります。改定分の入金は令和7年度、支払いは令和8年度という食い違いを避けたいなら、年度内に支給の決定と金額の確定まで済ませておく必要があるということです。
なお事務連絡は、算出が困難な場合には概ねの見込額を年度末に支払う方法も示しています。3月以降の支払いになる園も、支払う時期を職員に知らせておくところまでは年度内に済ませてください。あなたの園では、改定分の支給の決定を3月中に済ませられそうでしょうか。
Q. 改定分を全額一時金で払ってよいですか。
事務連絡は、ベースアップによる差額分を一時金等で支払うことを基本としつつ、その他の方法も妨げないとしています。年度途中の改定分については一時金での支払いが基本の形です。ただし処遇改善等加算の要件(区分2・区分3の改善額の1/2以上を基本給か毎月の手当で行う)は別に効くので、翌年度以降の給与表の改定とセットで考えてください。
※令和8年の人事院勧告を踏まえた公定価格の改定率は、本記事の執筆時点(令和8年9月)では公表されていません。公表後は、こども家庭庁の資料で率と支払いの時期の要請を確かめてください。
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