遠方に住む理事や仕事を持つ評議員が集まりにくく、理事会や評議員会をオンラインや書面で済ませられないかと考える理事長・事務長の方へ。改正私立学校法のもとで何ができて何ができないのかを、条文と文部科学省の説明資料のQ&Aに沿って整理し、議事録に書く事項を写して使える表にまとめます。
理事会・評議員会のオンライン開催と書面での議決 — 寄附行為の定め・議事録に書く出席の方法・書面だけの開催は不可
この記事の要点
- 理事会はオンラインで開ける。ただし会議を開かずに書面だけで決める開催は認められず、開催した上で一部の出席者の書面やメールによる意思表示を認める形になる (文部科学省の説明資料のQ&A)
- 書面やメールで議決に加わるには、寄附行為にその定めが要る1。方法は、受け取った側が出力して書面にできる電子的な方法に限られる2
- 議事録には、その場所にいない理事・監事・評議員が出席した方法を書く3。書面の議事録には出席した理事と監事が署名または記名押印する4
根拠:1私立学校法42条4項・私立学校法76条5項2私立学校法施行規則8条3同15条3項1号・私立学校法施行規則23条3項1号4私立学校法43条2項
オンライン開催はできる、書面だけの開催はできない
理事会の決議は、議決に加わることができる理事の過半数 (寄附行為で上回る割合を定めればその割合以上) が出席し、その過半数で行います1。ただし、寄附行為の変更の決議は議決に加わることができる理事の数の3分の2以上、理事会の決議による解散と合併は理事の総数の3分の2以上の多数で決します2。
評議員会の決議も、議決に加わることができる評議員の過半数が出席し、その過半数で行います3。ただし、監事の解任4と役員などの責任の一部免除5は、議決に加わることができる評議員の数の3分の2以上で決します6。役員などの学校法人に対する損害賠償の責任の免除7は、評議員の全員一致が要ります8。
会議の場所にいない人の出席について、施行規則は、理事会の議事録にその場所にいない理事・監事・会計監査人が出席したときの出席の方法を書くよう定めています9。文部科学省の説明資料のQ&Aも、理事会のオンライン開催は可能としています。
根拠:1私立学校法42条1項2同42条2項3同76条1項4同48条1項5同92条1項6同76条2項7同91条8同76条3項9私立学校法施行規則15条3項1号
理事会は単に議決を行うための機関ではなく、理事が議題について相互に意見交換を行って業務執行の意思決定をすることが期待されるので、書面開催は認められないとされています(文部科学省の説明資料のQ&A)。ただし、理事会を開催した上で、一部の出席者について書面やメールによる意思表示を認めることは可能とされています。全員が集まれない月は、開いた会議にオンラインや書面で加わる形にできないか、寄附行為を見ながら考えてみてください。
| 形 | できるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 会場に集まって開く | できる | 私立学校法施行規則15条3項1号 (議事録に開催の日時と場所を書く) |
| オンライン (映像と音声) で開く。一部の理事がオンラインで出席する | できる | 文部科学省の説明資料のQ&A |
| 開いた会議に、一部の理事が書面やメールで賛否を示して加わる | 寄附行為に定めがあればできる | 私立学校法42条4項・私立学校法施行規則8条 |
| 会議を開かずに書面だけで決める | 認められない | 文部科学省の説明資料のQ&A |
| 他の理事に議決を委任する (白紙委任を含む) | できない | 文部科学省の説明資料のQ&A |
| 理事全員の書面の同意で決議があったものとみなす | 私立学校法は一般法人法のこの規定を理事会に準用していない | 私立学校法44条1項 |
書面やメールで議決に加わる — 寄附行為の定めと、省令が決める方法
学校法人は、寄附行為で定めるところにより、理事が書面または文部科学省令で定める情報通信の技術を利用する方法により理事会の議決に加わることができるものとすることができます1。評議員会についても、寄附行為で定めるところにより、評議員が書面または情報通信の技術を利用する方法により議決に加わることができるものとすることができます2。
省令が定める方法は、送信者の電子計算機から受信者の電子計算機へ電気通信回線を通じて送信してファイルに記録する方法、閲覧に供してファイルに記録する方法、電磁的記録媒体を交付する方法です3。いずれも、受信者がファイルへの記録を出力して書面を作成できるものでなければなりません4。電子メールで賛否を送る形がこれに当たると考えています。
原則
理事会の決議は、議決に加わることができる理事の過半数が出席し、その過半数をもって行う(私立学校法42条1項)。寄附行為の変更・解散・合併の決議は、3分の2以上の多数で決する。
私立学校法42条2項
ただし
学校法人は、寄附行為をもって定めるところにより、理事が書面または文部科学省令で定める情報通信の技術を利用する方法により理事会の議決に加わることができるものとすることができる。
私立学校法42条4項
賛否を明らかにした上で書面で議決権を行使することは可能ですが、理事は個々人の能力等を信託して委任契約を締結する者なので、他人に委任することはできません(文部科学省の説明資料のQ&A)。また、同じQ&Aは、書面やメールで議決権を行使した理事は会議の出席者に含まれる一方、会議での議論の結果として議案が修正されて決議にかけられた場合は、その議案の決議には参加しないという整理を示しています。書面で加わる理事には、議案が修正されると票が数えられなくなることを前もって伝えておきましょう。
根拠:1私立学校法42条4項2同76条5項3私立学校法施行規則8条1項4同8条2項5私立学校法42条4項・私立学校法76条5項6同108条7同42条2項8同150条
招集と報告の省略 — 準用されている規定と、されていない規定
理事会を招集するには、理事会の日の1週間前 (寄附行為で短い期間を定めればその期間) までに、各理事と各監事へ通知を出します(私立学校法44条1項で準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律94条1項)。理事と監事の全員の同意があれば、招集の手続きを経ずに開けます(私立学校法44条1項で準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律94条2項)。評議員会は、評議員会の日の1週間前までに評議員へ書面で通知し、評議員の承諾を得れば電子的な方法で通知できます1。
評議員が書面や電子的な方法で議決権を行使できるようにするときは、評議員会を招集する際に理事会がその旨を定め2、招集の通知にも書きます3。寄附行為に定めがあるだけでは足りず、招集のたびに決めて知らせる点に気をつけましょう。
理事・監事・会計監査人が理事と監事の全員に理事会へ報告すべき事項を通知したときは、理事会への報告を要しません(私立学校法44条1項で準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律98条1項)。私立学校法は、省略できない報告を定めた一般法人法の規定を、理事長などの職務の執行の状況の報告 4 に読み替えています5。そのため、この報告は通知による省略の対象になりません。
一般法人法には、理事全員が書面または電磁的記録で同意すれば理事会の決議があったものとみなす規定があります6。私立学校法が理事会について準用しているのは招集の手続きと報告の省略の規定で、この規定は含まれていません5。会社の取締役会で使われる書面決議の感覚を、園の法人の理事会に持ち込まないようにしましょう。
根拠:1私立学校法70条4項・私立学校法70条5項2同70条2項4号・私立学校法施行規則20条3私立学校法70条6項4同39条1項5同44条1項6一般社団法人及び一般財団法人に関する法律96条
議事録 — 出席の方法・署名・備置き
理事会の議事録は、文部科学省令で定めるところにより作成します1。書面または電磁的記録で作り、書く事項は次のとおりです2。
・開催の日時と場所。その場所にいない理事・監事・会計監査人が出席したときは、その出席の方法
・議事の経過の要領とその結果
・特別の利害関係を有する理事の氏名
・出席した理事・監事・会計監査人の氏名と、議長の氏名
評議員会の議事録も、その場所にいない出席者の出席の方法を書く点は同じです3。理事会の議事録と違い、議事録の作成に係る職務を行った者の氏名も書きます4。
書面で作った議事録には、理事会に出席した理事 (寄附行為で、理事会で定めた2人以上の理事とする定めがある場合はその理事) と監事が署名または記名押印します6。電磁的記録で作った議事録には、作成者を示し改変が無いことを確認できる電子署名の措置をとります7。決議に参加した理事で議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定されます8。
文部科学省の説明資料のQ&Aは、理事会の議事録には出席した監事全員の署名等が必要で、記名押印とすることも可能としています。議事録は理事会の日から10年間、主たる事務所に備え置きます9。評議員会の議事録も10年間です10。オンラインで出席した理事や監事の署名をどう集めるか、電子署名を使うか郵送するかを先に決めてみてください。
根拠:1私立学校法43条1項2私立学校法施行規則15条3同23条3項1号4同23条3項8号5同15条4項6私立学校法43条2項7同43条3項・私立学校法施行規則16条8私立学校法43条4項9同43条5項10同78条2項
オンラインで理事会を開くときの段取り
寄附行為を確かめる
書面や電子的な方法で議決に加わる定めがあるかを見る。無ければオンライン出席までにし、書面での議決は使わない
招集の通知を出す
理事会の日の1週間前 (寄附行為で短い期間を定めていればその期間) までに各理事・各監事へ出す。全員の同意があれば手続きを省略できる
会議を開く
議長が出席者ごとの出席の方法と、音声が通じていることを確かめて記録する
書面・メールの賛否を扱う
出席者に数える。議案が修正されたときは、その議案の決議には参加しないものとして扱う
議事録を作り、署名を集める
出席の方法を書き、出席した理事と監事の署名または記名押印 (電子署名も可) をそろえ、10年間備え置く
| 項目 | 根拠 | 記載した (済 / 未) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 開催の日時と場所 | 私立学校法施行規則15条3項1号・私立学校法施行規則23条3項1号 | ||
| その場所にいない出席者の氏名と出席の方法 (オンライン・書面・メール) | 私立学校法施行規則15条3項1号・私立学校法施行規則23条3項1号 | ||
| 招集の手続き (省略したときは全員の同意) | 私立学校法44条1項・私立学校法70条4項 | ||
| 議事の経過の要領とその結果 | 私立学校法施行規則15条3項3号・私立学校法施行規則23条3項3号 | ||
| 特別の利害関係を有する理事・評議員の氏名 | 私立学校法施行規則15条3項4号・私立学校法施行規則23条3項4号 | ||
| 出席した理事・監事・会計監査人 (評議員会は評議員も) の氏名 | 私立学校法施行規則15条3項6号・私立学校法施行規則23条3項6号 | ||
| 議長の氏名 | 私立学校法施行規則15条3項7号・私立学校法施行規則23条3項7号 | ||
| 議事録の作成に係る職務を行った者の氏名 (評議員会) | 私立学校法施行規則23条3項8号 | ||
| 署名または記名押印 (理事会は出席した理事と監事) | 私立学校法43条2項 | ||
| 備置き (理事会・評議員会の日から10年間) | 私立学校法43条5項・私立学校法78条2項 |
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