「理事長の報酬はいくらまでなら問題にならないのか」「無報酬の監事や評議員にも基準は要るのか」— 園の学校法人の理事長や事務長から、決算の時期によく聞かれる問いです。この記事では、改正私立学校法が求める役員・評議員の報酬等の支給の基準について、何を定めるのか、どう決めるのか、毎年度どんな書類を作って備え置くのかを条文に沿って整理し、基準の骨子を写して使える表にまとめます。
役員報酬の支給基準 — 改正私立学校法で園の法人が定めるもの・決め方・毎年度の書類と閲覧への備え
この記事の要点
- 学校法人は、役員と評議員に対する報酬等について、民間事業者の役員の報酬等や従業員の給与、法人の経理の状況などを考慮して不当に高額にならない支給の基準を定め、その基準に従って支給しなければならない1
- 基準の策定と変更は理事会が理事に任せられない事項で、決める前に評議員会の意見を聴く2
- 基準を記載した書類は毎会計年度作り、定時評議員会の日から5年間主たる事務所に備え置いて、在学する者その他の利害関係人の閲覧に応じる3
基準は「あるかないか」ではなく「何を書くか」 — 100条が求めること
私立学校法は、学校法人が役員と評議員に対する報酬等について、支給の基準を定めなければならないとしています1。ここでいう報酬等は、報酬や賞与のほか、職務遂行の対価として受ける財産上の利益と退職手当を含む広い言葉です。基準を定めるときの物差しは、民間事業者の役員の報酬等と従業員の給与、その学校法人の経理の状況、その他の事情で、不当に高額なものとならないようにすることが求められています。
定めた基準に従って支給しなければならない、という2つ目の決まりも同じ条文にあります2。基準は作って終わりではなく、実際の支給がその基準の枠に収まっているかを、毎年度の決算で確かめる書類です。
| 項目 | 書き方の例 |
|---|---|
| 対象になる人 | 理事 (理事長・業務執行理事・そのほかの理事)、監事、評議員の区分ごとに書く |
| 報酬の形 | 常勤の理事長は月額、非常勤の理事・監事は理事会に出席した日の日額、評議員は無報酬など |
| 額の決め方 | 職員の給与規程との関係、月額や日額の上限、賞与・退職手当の有無 |
| 支給の方法と時期 | 毎月何日に振り込むか、日額は会議の翌月にまとめて払うかなど |
| 無報酬の区分 | 評議員が無報酬でも、その旨を基準に書く |
基準の対象は役員と評議員の全員で、無報酬の評議員がいる法人でも変わりません。園の法人では、報酬を受けているのは理事長だけ、という形が少なくありません。それでも基準は、無報酬の区分を含めて役員と評議員の全員分を書きます。あなたの園の基準には、監事と評議員の欄があるでしょうか。
決め方の3つの物差し — 民間の役員・職員の給与・園の経理の状況
条文が挙げる物差しのうち、園の法人で使いやすいのは職員の給与との比較です。理事長の月額が園の最も高い給与の職員と比べてどの位置にあるか、その差が職務の重さで説明できるかを、理事会の資料に1行添えておきます。園の経理の状況は、事業活動収支計算書の人件費比率や当年度収支差額で示せます。
学校法人は、その事業を行うに当たり、理事・監事・評議員・職員その他の関係者に特別の利益を与えてはなりません1。報酬の基準は、この決まりを守っていることを外から見えるようにする書類でもあります。
根拠:1私立学校法20条
手続き — 評議員会の意見を聴き、理事会で決め、毎年度書類にする
報酬等の支給の基準の策定と変更は、理事会が理事に決定を任せられない事項です1。理事会がこれを決めるときは、あらかじめ評議員会の意見を聴かなければなりません2。理事長が一人で決めた基準は、手続きの面で基準になっていません。
基準を作り、毎年度つないでいく段取り
案を作る
区分ごとの報酬の形・額の決め方・支給の方法を、職員の給与規程と並べて案にする
評議員会の意見を聴く
理事会で決める前に、評議員会に案を示して意見を聴く
理事会で決める
決議を議事録に残す。変更するときも同じ手順
毎会計年度、書類にする
基準を記載した書類を会計年度終了後3か月以内に作る。内容に変更がない年度も、その年度の書類として作る
備え置く
定時評議員会の日から5年間、主たる事務所に置き、利害関係人の閲覧に応じる。従たる事務所には写しを3年間
原則
報酬等の支給の基準を記載した書類は、毎会計年度終了後3か月以内に作成し、定時評議員会の日から5年間、主たる事務所に備え置く。
私立学校法107条
ただし
学校法人が成立した日の属する会計年度は、3か月以内ではなく、成立した日以後遅滞なく作成する。
私立学校法107条1項
従たる事務所がある法人は、財産目録等の写しを定時評議員会の日から3年間、従たる事務所にも備え置く。電磁的記録で作り、従たる事務所でも閲覧の請求に応じられる措置をとっていれば写しは要らない。
私立学校法107条4項
閲覧と決算書 — 基準は外から見られる書類
基準を記載した書類は財産目録・役員等名簿とともに「財産目録等」として、在学する者その他の利害関係人が閲覧を請求でき、正当な理由がなければ拒めません1。学校法人は財産目録等の内容をインターネットなどで公表するよう努めることとされ2、園を設置する知事所轄の法人には努力義務です。
決算書の側では、理事と監事に支払う報酬は事業活動収支計算書の人件費の小科目「役員報酬」に載ります3。閲覧に来た人は、基準の書類と決算書の役員報酬の額を並べて見ることができる、ということです。基準の上限と決算書の額が食い違っていれば、そこが最初に問われます。
根拠:1私立学校法107条5項2同137条3学校法人会計基準別表第二
| 区分 | 常勤・非常勤 | 報酬の形 (月額・日額・年額・無報酬) | 額の決め方 | 支給の方法と時期 | 賞与・退職手当の有無 |
|---|---|---|---|---|---|
| 理事長 | |||||
| 業務執行理事 | |||||
| そのほかの理事 | |||||
| 監事 | |||||
| 評議員 |
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まとめ — 基準・手続き・書類の3点を毎年度つなぐ
役員報酬の決まりは、不当に高額にならない基準を定めること、評議員会の意見を聴いて理事会で決めること、毎年度書類にして5年間備え置くことの3点です。園の法人で報酬を受けているのが理事長だけでも、基準は役員と評議員の全員分を区分ごとに書きます。
内容に変更がない年度も、その年度分の書類を改めて作ります。決算の理事会で計算書類等を承認するとき、同じ理事会で基準を確かめたことを議事録に残しておくと、その年度の書類づくりを議事録から始められます。来年の定時評議員会までに、基準の骨子の表を埋めてみてください。
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