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園舎建設の借入金 — 資金収支・事業活動収支・貸借対照表での見え方と基本金の未組入額

「園舎の建て替えで2億円を借りる。決算書はどう変わるのか」— 借入れを伴う建て替えは、園の学校法人にとって数十年に一度の大きな取引です。この記事では、借入金が3つの計算書のどこに出るのか、借入金で取得した園舎の基本金はいつ組み入れるのか、注記と借入金明細書に何を書くのかを学校法人会計基準に沿って整理します。理事会の手続きにも触れ、借入金の管理表を写して使える形にまとめます。

この記事の要点

  • 借入れは資金収支計算書の借入金等収入、返済は借入金等返済支出、利息は借入金等利息支出に載る。事業活動収支計算書に載るのは利息だけで、元本の返済は載らない1
  • 借入金で取得した園舎の価額のうち借入金に相当する額は、返済した年度に返済額を第1号基本金に組み入れる。借換えによる返済は組入れに当たらない2
  • 多額の借財は理事会が理事に任せられない事項で、決める前に評議員会の意見を聴く。担保に供した資産は計算書類に注記する3

根拠:1学校法人会計基準別表第二・学校法人会計基準別表第三2同13条3項3私立学校法36条3項2号・4項・学校法人会計基準40条5号

借入金は3つの計算書で違う顔をする

学校法人会計には貸借対照表・事業活動収支計算書・資金収支計算書の3つがあり、借入金はそれぞれで違う形で出ます。貸借対照表では、返済の期限が貸借対照表日後1年を超えて到来する分が固定負債の長期借入金、1年以内に到来する分が流動負債の短期借入金です1。長い返済のうち翌年度に返す分は、毎年度の決算で短期借入金へ振り替えます。

資金収支計算書はお金の動きを見る計算書なので、借りた年度に借入金等収入 (長期借入金収入・短期借入金収入)、返す年度に借入金等返済支出、利息は借入金等利息支出として載ります2。園舎の工事代金は施設関係支出の建物支出や建設仮勘定支出で、プールや園庭の工作物は構築物支出です2。

原則

借入金の利息は、資金収支計算書の借入金等利息支出と、事業活動収支計算書の借入金等利息に載せる。

学校法人会計基準別表第二・学校法人会計基準別表第三

ただし

補助活動の収支を純額で表示する園では、補助活動に係る借入金等利息支出は相殺され、相殺した科目と金額を注記に書く。

令和7年3月27日 6高私参第27号

借入金が3つの計算書に出る場所
計算書借りたとき返すとき利息
貸借対照表長期借入金 (1年超) と短期借入金 (1年以内) が負債に載る残高が減る出ない (未払利息があれば未払金)
事業活動収支計算書出ない出ない教育活動外支出の借入金等利息
資金収支計算書借入金等収入借入金等返済支出借入金等利息支出

事業活動収支計算書に元本の返済が出ないのは、返済が「その年度の成果」ではなく「負債を減らす取引」だからです。代わりに、借入金で建てた園舎の減価償却額が毎年度の経費として載ります3。

根拠:1学校法人会計基準別表第一2同別表第三3同別表第二

基本金の未組入額 — 借入金で建てた園舎は、返した分だけ組み入れる

学校法人会計基準は、既設の学校の規模の拡大や教育の充実向上のために取得した固定資産の価額を第1号基本金に組み入れるものとしています1。園舎を自己資金で建てれば、取得した年度にその価額を組み入れます。

原則

固定資産を借入金や未払金で取得した場合、借入金や未払金に相当する金額は、その返済や支払を行った会計年度に、返済や支払を行った金額に相当する金額を基本金に組み入れる。

学校法人会計基準13条3項

ただし

新たな借入金や未払金による返済や支払は除かれるので、借換えで前の借入金を返しても、その年度の組入れには当たらない。

学校法人会計基準13条3項

返済による組入れは未組入額が限度で、返済が続いても未組入額に達した時点で組入れは終わる。未組入額は借入金の額と同じとは限らない。

日本公認会計士協会 学校法人委員会研究報告第15号

工事代金を建設仮勘定として支出した年度は、完成前でもその支出額を組み入れ、完成した年度は建設総額から組入れ済みの額を引いた額が組入れの対象になる。

日本公認会計士協会 学校法人委員会研究報告第15号

取得した時点で将来取替更新する必要がないことが明らかな資産は、基準のいう継続的に保持する資産に当たらず、組入れの対象にならない。

日本公認会計士協会 学校法人委員会研究報告第15号

日本公認会計士協会の学校法人委員会研究報告第15号も、借入契約の更新や、別の銀行から借りて返す形は実質的な返済ではないので基本金に組み入れる場合に該当しないとし、担保の有無は基本金組入れに影響を及ぼすものではないとしています。

例の園舎の基本金の組入れの流れ (借入金2億円を20年で返す場合)
年度出来事第1号基本金に組み入れる額未組入額
取得の年度園舎3億円を取得。自己資金1億円1億円2億円
2年目以降の各年度借入金を1,000万円ずつ返済1,000万円毎年1,000万円ずつ減る
返し終えた年度借入金の残高がゼロ(最後の返済額)0円

園舎の建て替えでは、取り壊した旧園舎に係る基本金は、同じ種類の資産を再取得するので、原則として取崩しの対象とせずにそのまま維持します。ただし、建替えに要した額が旧園舎の当初の取得価額を下回るなどして、基本金の取崩対象額が組入対象額を上回るときは、その差額を取り崩します(日本公認会計士協会 学校法人委員会研究報告第15号)。園舎の建設と関係なく預かり保育室を閉じるなど諸活動を廃止した年度は、その資産に係る基本金が取崩しの対象になります2。

維持した旧園舎の基本金は、新しい園舎の基本金のうち既に組み入れられている分として扱います。取得価額から旧園舎の基本金と第2号基本金から振り替えた額を引いた残りが、まだ組み入れられていない額です。借入金による未組入額はこの残りの範囲内で決まるので、借入金の額と同じになるとは限りません(日本公認会計士協会 学校法人委員会研究報告第15号)。

建て替えに備えて第2号基本金を組み入れていた園は、園舎を取得した年度に第2号基本金を第1号基本金へ振り替えます。研究報告第15号は、高額な固定資産の取得に係る組入れが取得年度に集中しないよう、取得に先行して組入計画に従い年次的・段階的に第2号基本金を組み入れることが肝要だとしています。

原則

基本金明細書では、各号の基本金ごとに、当期組入対象額から当期取崩対象額を差し引いて当期組入額を書く。

令和7年3月27日 6高私参第27号

ただし

固定資産を取得するために第2号基本金を第1号基本金へ振り替える額は、この差引きの計算に含めない。研究報告第15号は、この振替を差引きに含めずに「当期組入高」の中で扱うとしている。

日本公認会計士協会 学校法人委員会研究報告第15号

令和7年3月27日の通知の基本金明細書の記載例も、第2号基本金からの振替の行を当期組入対象額の行とは別に設けています(令和7年3月27日 6高私参第27号)。この記載例では振替の額を当期組入額に含めず、前期繰越高に振替の額と当期組入額を足した額を当期末残高としています(令和7年3月27日 6高私参第27号)。

未組入額は、計算書類の注記の「翌会計年度以後の会計年度において基本金への組入れを行うこととなる金額」に載ります3。毎年度の決算で、返済表の当年度返済額と基本金の組入額を突き合わせ、組入れが未組入額を超えていないかを確かめてください。

根拠:1学校法人会計基準13条1項1号2同14条1号3同40条6号

決算で書くもの — 注記・借入金明細書・担保

担保に供されている資産の種類と額は、計算書類に注記します1。園舎の建設で土地や建物を担保に入れた園は、その種類と額を書きます。担保を付けずに借りた園も、通知の注記事項記載例の「該当する事項がない場合」の例にならい、この項目に「なし」と書きます(令和7年3月27日 6高私参第27号)。

附属明細書の借入金明細書は、借入先を金融機関の種類 (公的金融機関・市中金融機関・その他) ごとに集計して記載し、摘要欄に借入金の使途と担保物権の種類を記載します (文部科学省の令和7年3月27日の通知)。会計監査人を置かない知事所轄の学校法人が作らないことができるのは活動区分資金収支計算書と基本金明細書 (高等学校を設置する法人は活動区分資金収支計算書だけ) で、借入金明細書はこの省略の対象に入っていません2。

根拠:1学校法人会計基準40条5号2同50条

園舎の取得で同一科目の資産総額の100分の1を超える増加があれば、固定資産明細書の摘要欄にその事由を書きます。小規模法人の会計処理等の簡略化についての古い通知も、会計監査人を置かない知事所轄の学校法人に読み替えて適用されます (文部科学省の令和7年3月27日の通知)。

理事会の手続きと、返済を支える資金繰り

多額の借財は、理事会が理事に決定を任せられない事項で、理事会がこれを決めるときはあらかじめ評議員会の意見を聴かなければなりません1。園舎の建設のための借入れは、園の法人にとって多額の借財に当たると考えて手続きを踏んでおきましょう。何を多額と見るかは、理事会の規程で金額の目安を決めておくことをお勧めします。あなたの園の規程には、その目安が書いてあるでしょうか。

旧園舎の取壊しや土地の取得のような重要な資産の処分と譲受けも、同じく理事に任せられない事項です2。文部科学省の学校法人寄附行為作成例 (都道府県知事所轄学校法人向け) は、借入金その他予算外の新たな義務の負担の決議を特別決議にする例を示しています。議決に加わることができる理事の数の3分の2以上の多数で行い、会計年度内の収入で償還する一時の借入金は除く形です。特別決議にしないことも可能とされているので、あなたの園の寄附行為がどう定めているかを確かめてください。

作成例は、評議員会の意見を聴く事項を、各学校法人の判断で評議員会の決議事項とすることも可能だとしています。寄附行為でそう定めている園では、意見聴取では足りず評議員会の決議が要ります。

借入れを伴う建て替えの段取り

  1. 資金計画を作る

    総額、自己資金 (第2号基本金引当特定資産など)、補助金、借入額と返済年数を1枚にする

  2. 評議員会の意見を聴き、理事会で決める

    多額の借財として決議し、議事録に残す。寄附行為に特別決議の定めがあればその多数で

  3. 借入れと工事の支出

    借入金等収入と建設仮勘定支出・建物支出で資金収支に載せる。建設仮勘定の支出額はその年度の基本金の組入れの対象になり、借入金で払った分は返済した年度に返済額を組み入れる

  4. 取得年度の基本金組入れ

    第2号基本金を第1号基本金へ振り替える。取得価額から旧園舎の基本金と振替の額を引いた残りが組入れの対象で、その範囲内で借入金による分を未組入額として注記する

  5. 毎年度の返済と組入れ

    返済額を借入金等返済支出に載せ、未組入額を限度に同じ額を基本金に組み入れる。翌年度返済分を短期借入金へ

減価償却額は経費に載っても支払資金は減らないので、返済に回せる資金の目安は「基本金組入前当年度収支差額 + 減価償却額」と考えています。この額が返済額を下回る年が続くなら、返済年数を延ばすか、施設型給付費の見通しを見直すかを早めに決めます。

返済で手元の資金が薄くなる園に直接関わる注記もあります。年度末に第4号基本金に相当する資金を持っていない場合は、その旨と資金を確保するための対策を注記します3。

根拠:1私立学校法36条3項2号・4項2同36条3項1号3学校法人会計基準40条7号

借入金の管理表
借入先の種類 (公的・市中・その他)借入日当初の借入額期末残高うち1年以内の返済額返済期限利率使途担保当年度の返済額当年度の基本金組入額未組入額の残高

園の会計や監査の準備で迷うところがあれば、無料相談でお聞きください。

まとめ — 3つの計算書・未組入額・注記の3点

園舎の借入金は、貸借対照表では長期と短期に分けて負債に、資金収支計算書では収入・返済・利息として、事業活動収支計算書では利息と減価償却額として出ます。借入金の分の基本金は返した年度に組み入れ、担保は注記し、借入金明細書に使途と担保を書きます。

建て替えの計画が具体的になったら、返済表と基本金の組入れの表を同じ人が作る形にしておいてください。あなたの園の直近の決算書で、未組入額の注記と返済表の残高は合っているでしょうか。

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