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保育料・実費の滞納と未収入金 — 徴収不能引当金の計上と徴収不能額の処理

「3か月分の給食費が入っていない」「転園した子の保育料が残ったまま」— 保護者からの徴収が滞ったとき、園の決算ではどう扱うのでしょうか。この記事では、滞納が未収入金として決算に残る仕組み、徴収不能引当金の考え方と知事所轄の園の特例、回収できなくなったときの徴収不能額の処理、督促の段取りを学校法人会計基準に沿って整理し、未収入金の管理表を写して使える形にまとめます。

この記事の要点

  • 年度末に入っていない保育料や実費は、その年度の収入のまま未収入金として貸借対照表に載り、資金収支計算書では期末未収入金として収入の部の控除科目に載る1
  • 金銭債権に徴収不能のおそれがあるときは、見込額を徴収不能引当金に繰り入れる。会計監査人を置かない知事所轄の学校法人は繰り入れないことができる2
  • 実際に徴収できなくなった額は、引当金があればそこから、足りない分は徴収不能額として事業活動収支計算書の教育活動支出に載る3

根拠:1学校法人会計基準37条・学校法人会計基準別表第一2同10条・学校法人会計基準48条3同別表第二

滞納は「未収入金」として決算に残る — 消えるわけではない

施設型給付を受ける園では、園が保護者から集めるお金は、3号認定の利用者負担額 (認定こども園の場合)、副食費や教材費などの実費、特定負担額などです。給付費は市町村から入りますが、これらは園が請求して園が受け取るお金なので、滞納すれば園の未収入金になります。

学校法人会計基準は、当該会計年度の資金収入のうち期末未収入金を、収入の部の控除科目として資金収支計算書の収入の部に記載するとしています1。貸借対照表では、学生生徒等納付金や補助金などの貸借対照表日における未収額が流動資産の未収入金に載ります2。滞納があっても、その年度の収入は減らず、代わりに未収入金が増える、という形です。

根拠:1学校法人会計基準37条1項2同別表第一

滞納が3つの計算書にどう出るか
計算書滞納があったとき翌年度に回収したとき回収できなくなったとき
事業活動収支計算書収入はそのまま (減らない)出ない徴収不能額等 (教育活動支出)
資金収支計算書期末未収入金として収入の部の控除科目に前期末未収入金収入出ない (お金が動かない)
貸借対照表流動資産の未収入金が増える未収入金が減り現金預金が増える未収入金が減る

徴収不能引当金 — 見込みで先に費用にする仕組みと、知事所轄の園の特例

金銭債権については、徴収不能のおそれがある場合には、徴収不能の見込額を徴収不能引当金に繰り入れます1。引当金は、会計年度の末日に、将来の事業活動支出の発生に備えてその合理的な見積額のうち当該会計年度の負担に属する金額を事業活動支出として繰り入れることで計上します2。貸借対照表では、金銭債権から徴収不能引当金を控除した残額を記載し、必要があれば科目ごとに控除する形式でも記載できます3。

原則

徴収不能のおそれがある金銭債権については、徴収不能の見込額を徴収不能引当金に繰り入れる。

学校法人会計基準10条

ただし

会計監査人を置かない知事所轄の学校法人 (高等学校を設置するものを除く) は、徴収不能の見込額を徴収不能引当金に繰り入れないことができる。

学校法人会計基準48条

園を設置する知事所轄の法人の多くはこの特例の対象です。ただし、特例は「繰り入れないことができる」であって「繰り入れてはならない」ではありません。滞納が続く保護者の分を引当金にしておけば、回収できなくなった年度に費用が一度に立つことを避けられます。

引当金を計上した法人は、計上基準を重要な会計方針として注記し、直接控除の形にしたときは引当金の合計額も注記します4。文部科学省の令和7年3月27日の通知の注記例は、未収入金の徴収不能に備えるため、個別に見積もった徴収不能見込額を計上している、という書き方を示しています。

根拠:1学校法人会計基準10条2同11条2項3同20条4同40条1号・4号

回収できなくなったとき — 徴収不能額の処理

実際に徴収できないことが確かになった未収入金は、徴収不能となった金額と徴収不能引当金の計上額との差額を、徴収不能額として事業活動収支計算書に記載します1。引当金の額まではその引当金で受け止め、足りない分だけが当年度の支出になる、という形です。徴収不能引当金繰入額と徴収不能額は、教育活動支出の「徴収不能額等」の科目に並びます。

根拠:1学校法人会計基準別表第二

督促の段取り — 年度末までに「未収の残し方」を決める

督促は、滞納が始まってすぐの1回目が最も効きます。月末に入金を確かめて未収の一覧を更新し、翌月初めに1回目の連絡を口頭か連絡帳で入れ、3か月続いたら書面の督促と分割の相談に進む、という周期を園の決まりにしておきましょう。年度末には未収入金の一覧を確定して引当金の要否を判断し、その一覧を翌年度の督促の出発点として引き継ぎます。

督促の前に確かめることもあります。市町村から通知された利用者負担額と、副食費の免除の対象になる世帯かどうかを先に確かめ、請求額そのものが正しいことを確認してから督促に進みましょう。認定こども園の利用者負担額の滞納は園から保護者に督促しつつ、市町村が支給認定をしている子どもの話でもあるので、長引く滞納は園を所管する市町村の担当課に早めに相談しておくと安心です。

未収入金の管理表 (年度末用)
保護者 (園の中だけの符号)園児の在園・卒園の別科目 (利用者負担額・副食費・教材費など)滞納が始まった月未収の額督促の記録 (日付・方法)回収の見込み引当金の額

園の会計や監査の準備で迷うところがあれば、無料相談でお聞きください。

まとめ — 未収入金・引当金・徴収不能額の3段

滞納は、年度末に未収入金として残り、回収の見込みが薄い分は徴収不能引当金で先に備え、回収できなくなったら徴収不能額として処理する、という3段で決算に現れます。知事所轄の園の法人は引当金を繰り入れない特例が使えますが、滞納が続く園ほど引当金を置く意味は大きくなります。

まずは今年度の未収入金を、上の管理表の形で1枚に書き出してみてください。あなたの園の一覧には、卒園した子の分がいくら残っているでしょうか。

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