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事業報告書と財産目録 — 令和7年度決算から園が作る2つの書類の記載事項と作り方

「事業報告書は何を書けばいいのか」「財産目録は貸借対照表と何が違うのか」— 令和7年度の決算 (令和8年6月まで) で改正私立学校法と改正学校法人会計基準の形で初めて作ったこの2つの書類は、園の事務長から質問の多い書類です。この記事では、2つの書類の位置づけ、記載事項、決算後の段取りを条文と文部科学省の通知に沿って整理し、令和8年度の決算に向けて事業報告書の章立てを写して使える表にまとめます。

この記事の要点

  • 事業報告書は計算書類等の一部で、貸借対照表・収支計算書とともに毎会計年度終了後3か月以内に作り、監事の監査と理事会の決議を経て定時評議員会に提出する1
  • 財産目録は毎会計年度終了後3か月以内に作り、定時評議員会の日から5年間備え置く。金額は貸借対照表と同一で、資産を基本財産と運用財産に区分する2
  • 事業報告書は、法人の概要、事業の概要、財務の概要、業務の適正を確保するための体制の整備と運用の状況の概要の4つに区分して作るのが適当とされている (文部科学省の令和7年3月の通知)

根拠:1私立学校法103条2項・私立学校法104条・私立学校法105条2同107条・学校法人会計基準45条・学校法人会計基準46条

2つの書類の位置づけ — 計算書類等の中の事業報告書と、財産目録等の中の財産目録

改正私立学校法は、学校法人が毎会計年度終了後3か月以内に、各会計年度に係る計算書類等を作成しなければならないと定めています1。計算書類等とは、計算書類 (貸借対照表と収支計算書)、事業報告書、これらの附属明細書のことです。収支計算書は、事業活動収支計算書と、資金収支計算書およびそれに基づき作成する活動区分資金収支計算書からなります2。事業報告書は決算書のおまけではなく、計算書類等の一部として同じ期限・同じ手続きに乗る書類です。

財産目録は、役員及び評議員の名簿、報酬等の支給の基準を記載した書類とともに「財産目録等」と呼ばれ、同じく毎会計年度終了後3か月以内に作ります3。作成の期限が会計年度終了後3か月になったのは令和7年度の決算からで、令和8年6月末が最初の期限でした。

2つの書類の位置づけの違い
項目事業報告書財産目録
どの束に入るか計算書類等 (計算書類・事業報告書・附属明細書)財産目録等 (財産目録・役員等名簿・報酬等の支給基準)
作る期限会計年度終了後3か月以内会計年度終了後3か月以内
監査監事の監査を受ける—
理事会・評議員会理事会の決議による承認を受け、定時評議員会に提出して意見を聴く定時評議員会で報告する扱い
備置きと閲覧定時評議員会の日の1週間前の日から5年定時評議員会の日から5年

計算書類等は監事の監査を受け、その監査を受けた計算書類等が理事会の決議による承認を受けます4。理事は、定時評議員会の招集の通知に際して計算書類と事業報告書と監査報告を評議員に提供し、定時評議員会に提出して内容を報告し、意見を聴きます5。計算書類とその附属明細書は、備置きの5年間とは別に、作成した時から10年間保存します6。

根拠:1私立学校法103条2項2学校法人会計基準16条3私立学校法107条1項4同104条1項・3項5同105条6同103条4項

原則

計算書類等と財産目録等は、毎会計年度終了後3か月以内に作る。

私立学校法103条2項・私立学校法107条1項

ただし

学校法人が成立した日の属する会計年度は、財産目録等を成立した日以後遅滞なく作る。

私立学校法107条1項

会計監査人を置く法人では、計算書類と附属明細書は監事に加えて会計監査人の監査を受け、理事会の承認は会計監査報告を含む監査報告の内容を踏まえて行う。

私立学校法104条2項・3項

私学助成の補助金を受ける法人 (会計監査人を置く法人などを除く) は、計算書類とその附属明細書について、所轄庁の定めるところにより公認会計士又は監査法人の監査も受ける。補助金の額が少額で所轄庁の許可を受けたときは受けなくてよい。

私立学校振興助成法14条2項

従たる事務所がある法人は、計算書類等と監査報告の写しを定時評議員会の日の1週間前の日から3年間、財産目録等の写しを定時評議員会の日から3年間、従たる事務所にも備え置く。電磁的記録で作り従たる事務所でも閲覧の請求に応じられる措置をとっていれば要らない。

私立学校法106条2項・私立学校法107条4項

収益事業を行う法人は、その収益事業に関する会計については、計算書類とその附属明細書に代えて貸借対照表と損益計算書を作る。

学校法人会計基準1条2項

事業報告書 — 4つの区分と園での書き方

文部科学省の通知 (令和7年3月27日 6高私参第27号) は、事業報告書を4つに区分して作成することが適当だとしています。区分は、法人の概要、事業の概要、財務の概要、業務の適正を確保するための体制の整備と運用の状況の概要で、通知は参考例も示しています。参考例は大学法人を念頭に置いた項目立てなので、園の法人はそのまま写さず、自園に当てはまる項目だけを選びます。

事業報告書の4つの区分と、園での書き方
区分参考例に挙がる項目園での書き方
法人の概要名称・所在地、建学の精神、沿革、設置する学校、園児数と定員充足率、役員・評議員・教職員の概要認定区分ごとの園児数と利用定員を書き、役員の概要には責任限定契約や役員賠償責任保険の状況も書いておきましょう
事業の概要教育の概要、中期的な計画と事業計画の進み具合その年度の事業計画に掲げた行事・改修・職員研修がどこまで進んだかを書くのがお勧めです
財務の概要3つの計算書の経年比較と財務比率、資産運用・寄付金・補助金の状況、経営状況の分析と課題5年分の比較表は参考例の形を借り、人件費比率と収支差額の動きを1段落で説明しておきましょう
体制の整備と運用状況の概要関係する理事会の決議の概要と、体制の運用状況理事会でその体制の決議をしていれば、決議の概要とその年度の運用の状況を書くことをお勧めします

根拠:1私立学校法103条2項

事業の概要は、当初予算とセットで作った事業計画の「答え合わせ」です。予算と決算の対比が計算書類にあるように、事業計画と事業報告書が対になっていれば、理事会と評議員会での説明が一本の筋になります。

財産目録 — 貸借対照表と同じ金額を、より詳しく

財産目録は、会計年度末現在の全ての資産と負債について、名称・数量・金額などを詳細に表示する書類です。学校法人が成立した日における財産目録は、成立した日現在で作ります1。様式は第8号様式によります2。

原則

財産目録の金額は、貸借対照表に記載した金額と同一にする。

学校法人会計基準46条

ただし

資産は基本財産 (私立学校に必要な施設・設備またはこれらに要する資金) と運用財産 (経営に必要な財産) に区分し、負債は固定負債と流動負債に区分する。収益事業を行う法人だけ、収益事業会計資産と収益事業会計負債の項目を表示する。

学校法人会計基準45条2項・3項

基本財産と運用財産の区分は、各学校法人が私立学校法の資産の定めと寄附行為などを踏まえて決める。

令和7年3月27日 6高私参第27号

財産目録等は、在学する者その他の利害関係人から閲覧の請求があれば、正当な理由がある場合を除いて拒めません3。計算書類等と監査報告も同じで、在学する者その他の利害関係人が閲覧を請求でき、正当な理由がある場合を除いて拒めません4。会計監査人を置かない知事所轄の学校法人には、活動区分資金収支計算書や基本金明細書 (高等学校を設置する法人は活動区分資金収支計算書だけ) を作らないことができる特例がありますが、財産目録にはこの特例はありません5。

根拠:1学校法人会計基準43条2同47条3私立学校法107条5項4同106条4項5学校法人会計基準50条

原則

財産目録等の閲覧の請求は、正当な理由がある場合を除いて拒めない。

私立学校法107条5項

ただし

役員及び評議員の名簿については、個人の住所の部分を除外して閲覧させることができる。

私立学校法107条6項

計算書類等と監査報告については、債権者は閲覧のほかに謄本・抄本の交付や電磁的方法による提供も請求でき、その場合は法人が定めた費用を支払う。

私立学校法106条3項

同じ通知は、情報開示を主な目的とする改正後の基準の趣旨から、貸借対照表に記載する科目より詳細な内容を記載することが望ましいとしています。園なら、土地は所在地と面積、建物は園舎・遊戯室などの名称と構造、車両は園バスの台数、預金は銀行ごとの残高、借入金は借入先の種類ごとの残高、といった粒度です。

決算後の2つの書類の流れ

  1. 計算書類等と財産目録の案を作る

    4〜5月。固定資産台帳・残高証明・借入金の返済表と突き合わせる

  2. 監事の監査を受ける

    計算書類等 (事業報告書を含む) が監事の監査の対象。私学助成の補助金を受ける法人は、計算書類とその附属明細書について公認会計士又は監査法人の監査も受ける

  3. 理事会の決議

    監査を受けた計算書類等を理事会の決議で承認し、財産目録も同じ理事会で作成を終える

  4. 定時評議員会

    会計年度終了後3か月以内に、計算書類と事業報告書を提出して報告し、意見を聴く。財産目録は報告

  5. 備え置く

    計算書類等と監査報告は定時評議員会の1週間前の日から、財産目録等は定時評議員会の日から、それぞれ5年間

  6. 公表と所轄庁への提出

    知事所轄の園の法人では、インターネットなどでの公表は努力義務。私学助成の補助金を受ける法人は、会計年度終了後3か月以内に、計算書類と附属明細書に監査報告と内訳表 (事業活動収支・資金収支・人件費支出) を添えて所轄庁へ提出する

原則

計算書類等と財産目録等は、主たる事務所に備え置き、利害関係人の閲覧の請求に応じる。

私立学校法106条・私立学校法107条

ただし

寄附行為の内容と、計算書類等・監査報告・財産目録等のうち省令で定めるものの内容は、インターネットの利用その他の方法で公表するよう努める。

私立学校法137条

私学助成の補助金を受ける法人は、会計年度終了後3か月以内に、計算書類とその附属明細書、翌年度の収支予算書に公認会計士又は監査法人の監査報告を添えて所轄庁へ提出する。

私立学校振興助成法14条4項

令和8年度の決算の段取り (令和9年3月31日決算)

  1. 3月31日会計年度の末日
  2. 6月末計算書類等と財産目録等の作成の期限 (会計年度終了後3か月以内)。理事会の承認と定時評議員会もこの中に置く。私学助成を受ける法人は、所轄庁への提出の期限も同じ3か月以内
  3. 定時評議員会の日計算書類等はその1週間前の日から、財産目録等はその日から、主たる事務所での備置きが始まる

私なら、6月末が期限なので、監事の監査は5月中に終える日程を先に押さえておきます。

令和8年度の決算に向けて — 章立てを今のうちに決めておく

令和7年度の決算で初めて作った事業報告書は、参考例を写した項目が多く、園の実態に合わない章が残っていることが少なくありません。令和8年度の決算に向けて、章立てと担当、元になる資料を今のうちに決めておくと、来年6月の作業が短くなります。あなたの園の事業報告書は、誰がどの章を書くか決まっているでしょうか。次の表を埋めてみてください。

事業報告書の章立てと担当の表 (令和8年度決算向け)
区分項目担当元になる資料済
法人の概要名称・所在地・沿革・設置する園寄附行為・登記事項証明書
法人の概要園児数と利用定員 (認定区分ごと)5月1日現在の在籍表
法人の概要役員・評議員・教職員の概要役員等名簿・職員名簿
事業の概要事業計画の進み具合当初予算と事業計画
財務の概要3つの計算書の経年比較と財務比率計算書類 (5年分)
財務の概要経営状況の分析と課題理事会の決算資料
体制の整備と運用状況決議の概要と運用状況理事会の議事録
附属明細書補足する重要な事項 (無ければその旨)

園の会計や監査の準備で迷うところがあれば、無料相談でお聞きください。

まとめ — 3か月以内・監事の監査・5年の備置きが共通の枠

事業報告書と財産目録は、どちらも会計年度終了後3か月以内に作り、5年間備え置く書類です。事業報告書は計算書類等として監事の監査と理事会の決議を経て定時評議員会に出し、財産目録は貸借対照表と同じ金額をより詳しく表示します。

令和7年度の書類を手元に置いて、章立ての表の「済」欄が来年6月にすべて埋まる形を先に作っておいてください。

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