「古い園バスを下取りに出した」「壊れた遊具を撤去した」「改修で園舎の一部を取り壊した」— 園の固定資産を手放す場面は毎年のようにありますが、決算書のどこにどう出るのかは意外と知られていません。この記事では、除却と売却の会計処理、事業活動収支と資金収支での見え方、基本金を取り崩すかどうかの判断、理事会の手続きと記録を整理し、除却・売却の記録票を写して使える形にまとめます。
固定資産の除却・売却 — 園舎・園バス・遊具を手放すときの会計処理と基本金の取崩し
この記事の要点
- 売却収入が帳簿残高を超えれば資産売却差額 (特別収入)、帳簿残高が売却収入を超えれば除却損・廃棄損を含む資産処分差額 (特別支出) として、事業活動収支計算書の特別収支に載る1
- 資金収支計算書には、施設や設備の売却収入が資産売却収入として載る。除却で現金が動かなければ資金収支には出ない2
- 基本金を取り崩せるのは、諸活動の廃止や経営の合理化で固定資産を有する必要がなくなった場合などに限られる3。同じ種類の資産を同じ水準で買い替えるときは、基本金を維持する
除却と売却は「特別収支」に出る — 差額だけが載る
学校法人会計の事業活動収支計算書は、教育活動収支・教育活動外収支・特別収支の3つに分かれ、固定資産の売却や除却は特別収支に載ります。売却収入が帳簿残高を超えるときは、その超過額が資産売却差額として特別収入に、帳簿残高が売却収入を超えるときは、その超過額が資産処分差額として特別支出に載ります。資産処分差額には除却損や廃棄損が含まれます1。載るのは売却額そのものではなく、帳簿残高との差額です。
資金収支計算書は、お金の動きを見る計算書です。園舎や設備を売ったときの収入は資産売却収入 (施設売却収入・設備売却収入) に載り、固定資産に含まれない物品の売却は雑収入の廃品売却収入に載ります2。壊れた遊具を撤去しただけでお金が入ってこなければ、資金収支には何も出ず、事業活動収支に除却損だけが出る、という形になります。
| 場面 | 事業活動収支計算書 | 資金収支計算書 |
|---|---|---|
| 園バスを下取りに出し、帳簿残高より高く売れた | 資産売却差額 (特別収入) | 設備売却収入 |
| 園バスを下取りに出し、帳簿残高より安かった | 資産処分差額 (特別支出) | 設備売却収入 |
| 壊れた遊具を撤去して廃棄した | 資産処分差額 (除却損・廃棄損) | 出ない (撤去費用は経費支出) |
| 改修で園舎の一部を取り壊した | 撤去した部分の帳簿残高が資産処分差額 | 出ない (改修の支出は建物支出か修繕費支出) |
減価償却を終えて帳簿残高が備忘価額だけになっている資産を廃棄したときは、除却損もその備忘価額だけです。手放す前に固定資産台帳で帳簿残高を確かめておくと、決算書に出る差額の見当が付きます。あなたの園では、下取りに出した園バスの帳簿残高を、下取りの前に見たことがあるでしょうか。
基本金はどうなるか — 取り崩す場合と、そのまま維持する場合
固定資産を手放すと、その資産の価額で組み入れていた第1号基本金をどうするかが問題になります。学校法人会計基準が基本金の取崩しを認めるのは、諸活動の一部または全部を廃止した場合、経営の合理化により固定資産を有する必要がなくなった場合、そのほかやむを得ない事由がある場合などです。それぞれ定める額の範囲内で取り崩すことができます1。
根拠:1学校法人会計基準14条
原則
経営の合理化により第1号基本金の対象の固定資産を有する必要がなくなった場合は、その固定資産の価額の範囲内で基本金を取り崩すことができる。
学校法人会計基準14条2号
ただし
諸活動の廃止や経営の合理化に当たらない、単なる買い替えや取替更新では、除却した資産と同じ種類の資産を再取得するので、基本金は取り崩さずに維持する。
日本公認会計士協会 学校法人委員会研究報告第15号
同じ種類の資産でも、当初に取得した資産の価額より低い価額で再取得し、その水準まで回復する予定がないことがある。その場合は、経営の合理化により固定資産を有する必要がなくなった場合に当たり、取崩しの対象になる。
文部科学省 学校法人会計問答集 基本金の取崩し
取崩しは、園が好きに選べるものではありません。学校法人委員会研究報告第15号は、取崩しの要件に該当する場合は、資産を他に転用するなどして継続的に保持する場合のほかは、基本金取崩しの対象としなければならないとしています。
同じ研究報告は、次の2つの場合には該当する基本金を取崩対象額とすることなくそのまま維持するとしています。資産を他に転用するなど今後も継続的に保持する場合と、除却または売却した資産と同一種類の資産を再取得する場合です。再取得までのあいだは基本金を繰り延べ、取崩対象額と組入対象額を各号ごとに比べて、上回る差額だけを取り崩す、という計算です。
園でつまずきやすい3つの場面 — 改修・少額の備品・取壊し
改修工事で園舎の一部を取り壊したときは、撤去した部分を除却する必要があります。研究報告第20号 (固定資産に関するQ&A) は、撤去した部分の金額の把握が難しくても、建築時の見積書と改修の見積書を比べて面積などの指標で按分するなどの方法で除却すべき部分の金額を見積もることは可能だとしています。改修の支出を建物に足すだけで、古い部分を残したままにしないことが要点です。
原則
改修で園舎の一部を取り壊したときは、撤去した部分の金額を見積もって除却する。
日本公認会計士協会 学校法人委員会研究報告第20号
ただし
施設・設備関係支出と経費支出の区分が特に困難な支出を、税法の形式的な区分基準を参考にして経理規程で分ける園もある。その形式基準で施設・設備関係支出とした残額については、除却損を計上しない経理をする。
日本公認会計士協会 学校法人委員会研究報告第20号
減価償却の対象は、固定資産のうち時の経過によりその価値を減少するものです1。
根拠:1学校法人会計基準8条
手続きと記録 — 理事会の決議・台帳・明細書
園舎や土地のような重要な資産の処分は、理事会が理事に決定を任せられない事項で、決める前に評議員会の意見を聴きます1。園バスや遊具の入れ替えを理事会に諮る園は少ないかもしれませんが、何を重要な資産と見るかを理事会の規程で決めておけば迷いません。
固定資産を手放すときの段取り
帳簿残高を確かめる
固定資産台帳で取得価額・減価償却累計額・帳簿残高を見る
処分の方法を決める
売却 (下取り)・廃棄・寄贈のどれか。重要な資産なら理事会の決議と評議員会の意見聴取
証拠を残す
下取りの明細、廃棄の証明、撤去前後の写真
台帳と計算書に載せる
台帳から外し、事業活動収支の特別収支と資金収支の売却収入に載せる
明細書の摘要に書く
災害による廃棄などの特殊な事由や、資産総額の100分の1を超える増減は固定資産明細書の摘要に事由を書く
固定資産明細書の摘要欄には、贈与、災害による廃棄その他特殊な事由による増加や減少があった場合と、同一科目で資産総額の100分の1に相当する金額を超える増減があった場合に、その事由を記載します(令和7年3月27日 6高私参第27号)。会計監査人を置かない知事所轄の学校法人は、活動区分資金収支計算書と基本金明細書 (高等学校を設置する法人は活動区分資金収支計算書だけ) を作らないことができます2。固定資産明細書はこの省略の対象ではないので、台帳と処分の記録も残します。
根拠:1私立学校法36条3項1号・4項2学校法人会計基準50条
| 資産の名称 | 取得年月 | 取得価額 | 帳簿残高 (処分時) | 処分の方法 (売却・廃棄・寄贈) | 処分日 | 売却額 | 差額 (売却差額・処分差額) | 証拠 (明細・写真) | 理事会の決議 (要・不要) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
園の会計や監査の準備で迷うところがあれば、無料相談でお聞きください。
まとめ — 差額・基本金・証拠の3つ
固定資産を手放すときの会計は、帳簿残高との差額を特別収支に載せること、基本金を取り崩すのは基準が挙げる場合に限ること、証拠を台帳とともに残すことの3つで決まります。園バスの入れ替えのたびに迷わないよう、記録票を1枚作っておいてください。あなたの園の固定資産台帳には、もう園に無い遊具が残っていないでしょうか。
出典
- e-Gov法令検索 学校法人会計基準8条(減価償却)・13条(基本金への組入れ)・14条(基本金の取崩し)・50条(計算書類の作成に関する特例)・別表第二(事業活動収支計算書記載科目)・別表第三(資金収支計算書記載科目)
- e-Gov法令検索 私立学校法36条(理事会の職務等)
- 文部科学省 学校法人会計問答集(Q&A)第16号 基本金に係る実務上の取扱いについて 3.基本金の取崩し
- 文部科学省 学校法人会計基準等
- 文部科学省 学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成等について(通知)(令和7年3月27日 6高私参第27号)
- 日本公認会計士協会 学校法人委員会研究報告第15号 基本金に係る実務上の取扱いに関するQ&A
- 日本公認会計士協会 学校法人委員会研究報告第20号 固定資産に関するQ&A
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