園庭のミスト、遮熱のサンシェード、保育室の空調の更新 — 夏の前に決めた設備の支出が、決算のときに「どの科目に載せるのか」で止まっていないでしょうか。この記事では、熱中症対策で園が入れる設備を学校法人会計の科目に当てはめ、修繕費との線と補助金を受けたときの処理を整理します。
熱中症対策の設備(ミスト・遮熱・空調)の会計処理 — 修繕費か固定資産か・科目の分かれ目と補助金の扱い
この記事の要点
- 科目は「どこに付いているか」で分かれる。建物に固定した空調やミストは建物、園庭に柱を立てたサンシェードや据置きのプールは構築物、移動式のファンや組立式のプールは機器備品(学校法人会計基準 別表第一)
- 園の経理規程で定めた金額の線を下回る移動式の機器は消耗品でよい。園舎に新しく付け加える設備は修繕費ではなく固定資産
- 補助金で買った設備も資産計上は同じ。補助金は特別収支の施設設備補助金に計上し、取得した設備のうち支払った額を第1号基本金に組み入れる(未払金・借入金の分は実際に支払った年度に組み入れ、新たな借入金や未払金で払い替えた分は数えない)。補助の対象と補助率は年度ごとの要綱で確かめる
科目の分かれ目 — 建物に固定・独立した工作物・動かせる機器の3段で決まる
学校法人会計基準の別表第一は、有形固定資産を「貸借対照表日後1年を超えて使用される資産」とし、建物には「建物に附属する電気、給排水、暖房等の設備を含む」、構築物は「プール、競技場、庭園等の土木設備又は工作物」と備考で示しています。熱中症対策の設備は、この備考にそのまま当てはめられます。
| 設備 | 付き方 | 科目 |
|---|---|---|
| 空調(エアコン)の新設・更新 | 建物に固定して配管・配線する | 建物(建物に附属する設備) |
| ミスト設備 | 建物の軒下に一体で設置する | 建物(建物に附属する設備) |
| ミスト設備 | 園庭に独立した柱や配管で設置する | 構築物 |
| サンシェード・遮熱ネット | 園庭に柱を建てて張る | 構築物 |
| サンシェード | 建物の外壁に固定する | 建物(建物に附属する設備) |
| 簡易設置型のプール | 組立式・ビニール製で片付けられる | 機器備品(少額なら消耗品) |
| プール | コンクリート製・地面に固定する | 構築物 |
| 移動式の冷風機・大型扇風機 | 置くだけで動かせる | 機器備品(少額なら消耗品) |
判断の順番は、まず建物に一体か(建物)、次に地面に固定した独立の工作物か(構築物)、どちらでもなく動かせるか(機器備品)です。同じ「ミスト」でも付き方で科目が変わるので、見積書に据付の方法が書かれているかを見てください。
修繕費との線 — 元に戻す支出は修繕費、新しく加える支出は固定資産
既にある園舎や設備を直す工事は、金額ではなく工事の中身で分かれます。日本公認会計士協会の指針(学校法人委員会研究報告第20号)は、建物の維持・補修のための支出を修繕費とし、量的・質的な向上に係る支出を固定資産とする整理です。壊れた空調を同じ能力のものに取り替えるなら修繕費の側、園舎に無かった空調を新しく付けるなら固定資産の側になります。
遮熱の塗装は迷いやすいところです。屋根や外壁を同じ種類の塗料で塗り直すだけなら現状の維持で修繕費ですが、遮熱の機能を新たに加える塗装は、建物の性能を高める支出として固定資産の側に寄ります。1つの工事に両方が混ざるときは、見積書の内訳を「塗り直し」と「機能の追加」に分けてもらっておくと、あとの判断が楽になります。
補助金を受けたとき — 収入に計上し、設備は資産、基本金に組入れ
こども家庭庁の保育環境改善等事業には、熱中症対策として保育所等に冷房設備を設置するための改修等を行う「熱中症対策事業」のメニューがあり、補助を受けてから10年経過後に再度受けられる仕組みです。実施主体は市区町村なので、園は市区町村の募集に応じて申請します。幼稚園については都道府県の私立幼稚園向けの施設整備の補助が別に用意されていることが多く、対象の設備と補助率は年度ごとの要綱で確かめます。
会計処理は、補助金を受けても設備の科目は変わりません。施設設備の拡充等のための補助金は、事業活動収支計算書では経常収支の経常費等補助金ではなく、特別収支の「施設設備補助金」に計上します(学校法人会計基準 別表第二)。設備は取得価額で固定資産に計上して減価償却を続け、教育の充実向上のために取得した固定資産の額は第1号基本金に組み入れます(同13条1項)。企業会計のように補助金の分だけ資産の額を減らす処理は、学校法人会計にはありません。
ただし基本金に組み入れるのは、その年度に支払った額までです。年度末に未払金や借入金が残っている分は当年度には組み入れられず未組入高となり、次年度以降に支払った年度で、その支払額に相当する額を基本金に組み入れます(文部科学省 学校法人会計問答集の「基本金の組入れ」)。ただし、新たな借入金や未払金で既存の借入金・未払金を返済・支払いした分は実質的な支払いではないので、組入れの対象にはなりません。夏の前に設置して支払いが翌年度にまたがる工事は、ここで組入額がずれます。
設備を入れるときに残しておくもの
見積書の内訳を分ける
機器の代金・据付工事・配管配線・撤去費用を分けてもらう。撤去費用は新しい資産の取得ではないので経費。取り替えた古い設備に帳簿残高が残っていれば、除却損として特別支出の資産処分差額に計上する(学校法人会計基準 別表第二)
科目を決める
建物・構築物・機器備品・消耗品費のどれかを、付き方と経理規程の線で決め、迷った理由をメモに残す
台帳に載せる
固定資産にしたものは固定資産台帳に登録し、耐用年数と減価償却の方法を決める
補助金の書類を残す
交付決定通知・実績報告・写真・領収書の写しを、補助金の関係書類として資産がある限り残す
「毎年夏の前に同じ迷いをしている」— そんな園は、上の表を経理規程の別紙にしておくと、翌年からは当てはめるだけで済みます。
Q. 夏の間しか使わないミスト設備は消耗品でよいですか。
使う期間が夏だけでも、翌年以降も使う設備なら「貸借対照表日後1年を超えて使用される資産」に当たり、有形固定資産です。別表第一の備考は、耐用年数が1年未満になっているものであっても使用中のものを有形固定資産に含めるとしています。組立式で片付けられるものは機器備品、園庭に据え付けたものは構築物で、金額が経理規程の線を下回るときだけ消耗品費になります。
ご相談・お見積りは無料です。現在の先生に知られることはありません。
交代のご相談 (無料・守秘義務あり) →※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する助言ではありません。内容は執筆時点の法令・通知等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、公認会計士等の専門家にご相談ください。