令和7年度に一本化された処遇改善等加算は、2年目に入って「計算はできるようになったが、細かい場面でどう扱うか分からない」という質問が増えています。この記事では、施設型給付を受ける幼稚園・認定こども園から実際によく聞く質問を、こども家庭庁のFAQ(第7版・令和8年5月15日時点版)と通知の答えに沿って整理します。
一本化2年目の処遇改善等加算 よくある質問 — 配分・賃金改善の確認・研修要件・実績報告
この記事の要点
- 区分1・区分2の対象は保育士や幼稚園教諭だけでなく、事務職員・調理員・スクールバスの運転手など通常の教育・保育に従事する全ての職員(非常勤を含む)。区分3は原則として副主任保育士等・職務分野別リーダー等
- 研修修了見込みで区分3の対象にした職員が年度内に修了できなくても直ちに返還は求められないが、翌年度に速やかに修了しないと虚偽等の返還措置に当たり得る
- 認定は区分1・2・3それぞれで行われ、区分3は他の施設への充当ができない。改善額の1/2以上は基本給か毎月決まって支払う手当で行い、残額は翌年度内に支払う
誰が対象か — 事務職員も運転手も、非常勤も
いちばん多い質問が対象職員です。FAQは、区分1・区分2による賃金の改善の対象は、保育士や幼稚園教諭だけでなく、事務職員、調理員、栄養士やスクールバスの運転手等を含め、通常の教育・保育に従事するすべての職員(非常勤職員含む)としています(No.1)。対象になり得るのは全職員で、区分2の加算額をそのうちどの範囲の職員に配るかは園が決める形です(通知)。「教員だけに配る」と決めるなら、その理由を配分の方針として説明できるようにしておきます。
区分3は性格が違います。リーダー的な役割を果たす中堅の保育士等の専門性の向上とキャリアアップの仕組みのための加算なので、賃金の改善は原則として副主任保育士等と職務分野別リーダー等が対象です。ただし、これに該当するなら事務職員や非常勤職員であっても対象にすることを妨げないとされ、賃金のバランスを踏まえて必要な場合は園長以外の管理職も対象になります(No.2)。
| 質問 | 答え |
|---|---|
| 区分3の研修を修了する見込みで対象にした職員が、年度内に修了できなかった | 加算額の返還を求めることまでは要しないが、翌年度に速やかに修了する。合理的な理由なく修了せずに配分対象とし続けると、虚偽等の場合の返還措置に該当することもあり得る(No.15) |
| 研修のⅰとⅱの両方を修了している職員がいる | 人数AとBのどちらか一方にだけ計上する。どちらにするかは園の判断(No.16) |
| 区分3の加算額を同じ法人の他の園の賃金改善に充てられるか | 旧加算Ⅱでは20%を上限に充てられたが、区分3は充当できない(No.17) |
| 区分1の認定を受けないと区分2の認定も受けられないのか | 認定は区分1・2・3それぞれで行う。区分2は認定されて区分1は認定されないケースもあり得る(No.18) |
| 4月1日時点で研修修了者がいない園が、年度途中に研修修了者を1人以上確保できた | 要件を満たした日の属する月の翌月から加算を適用できる。月の初日に確保できたときはその月から(No.81) |
配分と賃金改善の確認 — 1/2以上は基本給か毎月の手当
区分2と区分3を合わせた加算による改善額のうち1/2以上は、基本給か決まって毎月支払われる手当で改善します。区分3の分は全額を役職手当・職務手当など毎月の手当か基本給で改善するのが通知の要件です。年度途中の人事院勧告を踏まえた区分2の単価の増額分は、この1/2を見る「改善額」には含めません(No.10)。
年度末の一時金で払っても1/2の要件の計算には効かないということです。ただし翌年度からはその分が単価に織り込まれるので、基本給と毎月の手当の割合が1/2を下回っていないかは、翌年度の給与表を組むときに見直す項目です。あなたの園の今年度の配分は、一時金の割合が大きくなりすぎていないでしょうか。
改善額が加算額に届かなかった残額は、翌年度内に一時金などで支払います。加算の影響を除いた賃金の総額が基準年度を下回ってはいけない要件も別にあり、超過勤務手当が基準年度と比べて増減しているときは、その差額を差し引く(加える)調整をしても差し支えないとされています。園児数の大幅な減少で経営が悪化したなど基準年度を下回る特別な事情があるときは、必要事項を記載した特別な事情に係る届出をすれば要件を満たすものとできます(通知)。
研修要件と発令 — 令和8年度から本来の形で動いている
区分3の研修修了要件は令和8年度から本格適用され、幼稚園・認定こども園では中核リーダー・専門リーダーは合計60時間以上、若手リーダーは合計15時間以上の研修修了が求められます。研修修了者の人数は加算当年度の4月1日時点で判定し、原則として年度を通じて同じ人数で計算します。
区分3の対象者には、職位の発令や職務命令と経験年数(副主任保育士等は概ね7年以上、職務分野別リーダー等は概ね3年以上)も要件です。1人当たりの改善額にも枠があり、副主任保育士等は月額4万円を超えない額、職務分野別リーダー等は原則として月額5千円(副主任保育士等の改善額のうち最も低い額を上回らない範囲で月額5千円以上4万円未満にできる)です(通知)。
区分1のキャリアパス要件も、令和7年度限りの経過措置が終わり、職位・職責に応じた賃金体系と資質向上の計画を整えることが本来の要件として動いています。区分3の適用を受けている園はそれだけでキャリアパス要件を満たす扱いです。
実績報告 — 賃金台帳と突き合わせられる形にしておく
加算当年度の翌年度に、別紙様式6「賃金改善実績報告書」と職員ごとの明細(様式6別添1)を市町村に出します。区分2・区分3それぞれで改善等実績総額が加算額を下回っていないこと、加算の影響を除いた賃金総額が基準年度を下回っていないこと、基本給と毎月の手当が1/2以上であることを、賃金台帳と突き合わせられる形で示します。
賃金改善の内容を示す帳簿と証拠書類は、実績報告の後5年間保管します。外部監査でも処遇改善等加算の配分は必ず見る項目なので、「加算額」「配分の方針」「各職員への支払額」「残額の支払い」の4つが1本の線でつながる資料を残しておいてください。
年度の中で処遇改善等加算を回す
4月1日で数字を固める
平均経験年数、研修修了者の人数、対象職員の一覧を4月1日時点で確定し、記録に残す
配分の方針を決めて周知する
区分ごとの改善額、基本給と手当の割合、残額が出たときの支払い方を決め、職員に周知する
月ごとに支払う
毎月の手当と基本給の改善を給与計算に組み込み、年度途中の単価改定分は一時金の予定に入れる
3月に突き合わせる
改善額と加算額、基準年度との比較、1/2要件を確かめ、残額があれば翌年度内の支払いを計画する
実績報告を出す
様式6と別添1を作り、賃金台帳との対応が分かる形で5年間保管する
「うちの配り方で本当に合っているのか」— そう感じたら、上の表の答えと園の給与規程を並べて確かめてみてください。分からない点は加算の認定を受けた市町村に聞くのがいちばん早く、外部監査の場でも同じ資料でそのまま説明できます。
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