ささき公認会計士事務所 幼稚園・認定こども園の監査専門 無料相談

園の当初予算の作り方 — 園児数の見込みから科目へ、理事会・評議員会までの段取り

「来年度の予算を3月の理事会までに」と言われて、前年の数字を少し動かしただけの予算書になっていないでしょうか。この記事では、施設型給付を受ける幼稚園・認定こども園の当初予算を、園児数の見込みから科目へ落とし、評議員会・理事会を経て年度初めに間に合わせるまでの段取りとして整理します。

この記事の要点

  • 予算と事業計画は毎会計年度作る義務があり1、理事会が理事に任せられない決定事項で、決める前に評議員会の意見を聴く2
  • 出発点は認定区分ごとの園児数の見込み。そこに改定後の単価と人件費の増減を当てはめれば、収入と支出の大きな数字は決まる
  • 決算書は科目ごとに予算の額と決算の額を対比して載せる3。予算は年度が終わってから「答え合わせ」に使われる数字

根拠:1私立学校法99条2同36条3学校法人会計基準26条・35条

予算は「作らなければならない」書類 — 決めるのは理事会、聴くのは評議員会

私立学校法は、学校法人は毎会計年度、予算及び事業計画を作成しなければならないと定めています1。予算及び事業計画の作成又は変更は、理事会が理事に決定を委任できない事項に挙げられており2、理事会で決めることになります。決める前に評議員会の意見を聴く形は、文部科学省の寄附行為作成例(都道府県知事所轄学校法人向け)でも、予算と事業計画は理事会で決議し、変更するときも同様とする、という作りです。ただし作成例の注は、これらの事項を各学校法人の判断で評議員会の決議事項とすることも可能としているので、自園の寄附行為が「意見を聴く」なのか「決議を要する」なのかを先に確かめてください。

会計年度は4月に始まるので、当初予算は3月中に評議員会と理事会を終える段取りになります。評議員会を招集するには、理事会で日時・場所・目的である事項を定めなければならないので3、順番は「招集を決める理事会 → 意見を聴く評議員会 → 予算を決める理事会」の3段です。予算の評議員会は、評議員全員の合意があれば招集手続を省いて開くこともできます4。理事会の招集は寄附行為の定めによるので5、寄附行為の招集の決まりも先に確かめてください。

根拠:1私立学校法99条2同36条3項6号3同70条2項4同74条5同41条

出発点は園児数 — 認定区分ごとの人数を月に置く

園の収入の土台は、認定区分ごとの人数に公定価格の単価を掛けた施設型給付費と利用者負担額です。だからこそ、当初予算の最初の作業は科目ではなく園児数の見込みです。1号・2号・3号(認定こども園)の月ごとの在籍見込みを並べ、年度途中の入退園と満3歳児の受入れも織り込みます。

単価の側は、毎年12月ごろに人事院勧告を踏まえた改定後の単価が示され、翌年度の公定価格の見直し事項も年明けから4月にかけて公表されます。前年の単価をそのまま使うのではなく、分かっている改定を入れて組むと、予算と決算のずれが減ります。

当初予算の主な項目と、見込みの元になるもの
項目見込みの元
施設型給付費・利用者負担額認定区分ごとの園児数 × 改定後の単価。加算・減算の適用の見込み
実費徴収・特定負担額園が定めた額 × 対象の園児数(副食費の免除対象は加算で入る)
補助金・寄付金交付決定の見込みがあるものだけ。見込みの薄いものは入れない
人件費4月の職員配置と昇給、処遇改善等加算の配分、社会保険料の事業主負担
教育研究経費・管理経費前年実績を土台に、行事・修繕・光熱費の変動を織り込む
施設設備の支出・借入金の返済建て替え・大規模修繕の計画と返済予定表

科目に落とすときに迷うところ

学校法人会計の予算は、資金収支計算書と事業活動収支計算書の両方の形で組みます。資金収支の予算は「お金の出入り」、事業活動収支の予算は「その年度の成果」を表すので、同じ支出でも載る場所が違います。園舎の工事は資金収支では施設関係の支出、事業活動収支では減価償却として毎年に分かれて載る、というのが分かりやすい例です。

基本金への組入れも予算の段階で見ておきたい項目です。園舎や設備を取得する年度は第1号基本金への組入れが立ち、将来の建て替えに備えて積み立てるなら第2号基本金の組入計画が要ります。事業活動収支の予算で「基本金組入前当年度収支差額」がどうなるかまで見ておくと、理事会での説明がしやすくなります。

当初予算を年度初めに間に合わせる段取り

  1. 園児数の見込みを固める

    11月から12月に、進級の意向と入園申込の状況から認定区分ごとの月別人数を置く

  2. 収入を当てはめる

    12月に示される改定後の単価と、翌年度の公定価格の見直し事項を織り込む

  3. 人件費を組む

    4月の職員配置・昇給・処遇改善等加算の配分・社会保険料を月ごとに積む

  4. 経費と設備を組む

    修繕・行事・光熱費の変動、建て替えや大規模修繕の計画と借入金の返済

  5. 2つの計算書の形にする

    資金収支と事業活動収支の両方で予算書を作り、基本金組入額まで置く

  6. 評議員会で意見を聴き、理事会で決める

    招集を決める理事会、評議員会(意見)、理事会(決議)を3月中に終え、議事録を残す

  7. 所轄庁に提出する

    補助金を受ける法人は、決算の計算書類と一緒に翌年度の収支予算書を年度終了後3か月以内に所轄庁へ提出する

補助金の交付を受ける学校法人は、収支予算書を作成し、毎会計年度終了後3か月以内に、その年度の計算書類と一緒に翌年度の収支予算書を所轄庁に提出しなければなりません2。3月に決めた当初予算は、6月の決算の提出でもう一度使われる書類だということです。

根拠:1学校法人会計基準26条・28条・35条2私立学校振興助成法14条1項・4項

予算は「答え合わせ」に使われる数字

決算書には科目ごとに予算の額と決算の額が並びます。監査でも、大きくずれた科目は「なぜずれたのか」「補正予算で直したか」を聞かれます。ずれ自体が悪いのではなく、説明できないずれが問題になる、ということです。

前年の数字を少し動かしただけの予算では、この説明ができません。園児数から組み立てた予算なら、ずれの理由は「見込みより2号の子どもが何人少なかった」のように具体的に言えます。あなたの園の予算書は、園児数から説明できる形になっているでしょうか。

ご相談・お見積りは無料です。現在の先生に知られることはありません。

交代のご相談 (無料・守秘義務あり)

※免責事項: 本コラムは一般的な情報のご提供を目的とするもので、個別の事案に対する助言ではありません。内容は執筆時点の法令・通知等にもとづいており、その後の改正などにより現在の取り扱いと異なることがあります。正確な記載に努めていますが内容を保証するものではなく、本コラムの情報にもとづいて行われたご判断について、当事務所は責任を負いかねます。実際の手続きやご判断にあたっては、公認会計士等の専門家にご相談ください。

お知らせ・コラムの一覧へ戻る